マンガはほのぼの系かハッピーエンドで幸せな気分になれるのが専ら好みだけど、このハチミツとクローバーだけは、ほとんどの登場人物が失恋するけど、いかにも青春の日々が感じられて好き。私にとっても一生のうちの一番大事で、かつ葛藤していた時間を一緒に過ごした高校大学時代を思い出す。あと、主人公に(特に女性)が、才能がありかつ努力もしていて成長していくところに感情を移入できる話がいいのだけど、ハチミツとクローバーは竹本クンはどちらかというと、美大にいながら自分の才能の限界を感じて葛藤しているところに共感を持てる。東京の美大2年19歳の竹本。実家は高崎。小学生の時父祐一を亡くして看護婦の母美津との二人暮らし。再婚した合田稼頭男、カズさんは、美津の元患者で、やさしい実父と違い、丈夫で背も声もデカくて何でも力任せで、ガサツでかっこ悪くても一生懸命コトバを尽くして直球で気持ちを伝えるけど竹本は苦手である。亡くなった父の言葉に従い母を助けるために一生懸命だった竹本は、母が再婚して自由になって、自分がからっぽであることに気が付いた。6畳+台所3畳風呂無しの大学まで徒歩10分の築25年家賃三万8千円の学生アパートに住む。
同じアパートの住人達は個性派ぞろい。
建築科4年22歳金沢出身の真山巧はバイト先の理花さんに惚れている。
しばらく行方不明になっては札束を持って帰る2回留年した大学6年生の森田忍はいつもジャージでビーサン、他人の言葉に惑わされないけど、他人の言葉に全く耳をかさない。
長野からやってきた花本教授の従姉妹の娘、花本はぐみは、創作の才能と素晴らしい集中力で絵や彫刻に取り組む。はぐみを育ててくれた祖母は老いてゆっくり視力を失いつつあり、かつての強くて明るい人ではなくなってはぐみを小さな町の古い家に縛り付ける日々だった。そして祖母は亡くなり、花本教授は高校を卒業したら自分の大学に来るように誘ったのだ。竹本は出逢った瞬間恋に落ちた。そのことにすぐ気が付く真山。同じくはぐみに一目で恋に落ちた森田忍はその愛情表現の仕方も、苛めているのと紙一重、里芋の葉を持たせてコロボックルを演じさせたり足形を取ってネットにあげたりしてはぐちゃんを困らす。でも足形から、はぐちゃんの気に入りそうなピンクのラメのミュールを買ってプレゼントするなど、超ストレートな愛情表現を示す。
はぐちゃんは、他の教授から、次回作はとか海外にでて凱旋とか展覧会の傾向と対策とかいわれてプレッシャーを感じ、同級生達は花本さんは特別といって距離を置いていて、時々はぐちゃんはストレスから倒れてしまう。花本教授だけは「大丈夫、自由に作っていいんだよ」という。はぐちゃんのつくる料理は、グレープフルーツの炊き込みご飯とかまるごとリンゴカレー煮込みなど個性的というか破壊的。
鉄人とも言われる山田あゆみさんは、女性を越える肉体的なパワーをもち、真山巧LOVE一直線。そんな山田の気持ちを気付いている真山は、アルバイト先の理花さんに片想い一直線「俺は多分変わんないよ。お前が他の男探した方がぜんぜん速いよ。もうオレを見んのやめろ。」とつれないが、それでも諦められない山田。料理ははぐみと共に破壊的。酒屋の娘で商店街のアイドル。
絶対にかなわない恋なのに真山を思い続け、わざわざ理花さんに近づいて傷つく自虐的としかいいようがない山田。なんでという気がする。ここまで可能性が無かったら、なるべく逢わないようにした方がいいと思うけど。
理花さんと亡くなった夫の原田さんと花本教授は学生時代からの友達。
花本教授は上手くないのに絵が好きで、田舎からでてきて自信ないのにプライドが高かった。学生時代に原田と庭付きの広くて安いアパートに同居。3年の終わり頃北海道から来たオソロシク絵の上手い江上理花と三人で暮らすようになり、やがて原田と理花は結婚して独立して二人で事務所に引っ越していった。教授にとって原田も理花も一生のうちの一番大事だった時間を一緒に過ごして同じ部屋で同じものを食べて同じ空気を吸って体の一部のような存在だという。
しかし手がけた店のオープニングパーティの帰り道、理花の運転する車は、雪道で積載量オーバーのトラックのスリップに巻き込まれ、理花の夫、原田は亡くなり、理花の体には無数の傷と火傷がある。
事故の後、しばらく理花は花本教授と住んでいた。花本教授によれば、理花が原田の後を追わないように見張ってたという。花本教授は仕事も事務所から通い、夜は仕事を手伝っていた。やがて二人でいるとどうしても三人でいた頃を思い出してしまうことに気が付いて、花本教授は理花から離れ、他人のわずらわしいヘビーな部分に深入りしないように上手く逃げて立ち回れるタイプに見えた真山を、バイトで紹介した。
花本教授は一度理花に真山のことを聞いてみたことがある。「彼が私を好きな事に甘えていいように使ってしまう」という。「つき離して傷つけて、なのにそのまま側に置き続けて、傷つく顔に救われてたなんて、まともな人間の関係じゃない」と。
山田は卒業制作を無事提出したが就職試験に全部落ち、あと2年研究生として作品を作りながらいろいろチャレンジすることになった。
真山はバイトをしていた藤原設計事務所に受かり、理花に、はずれない腕輪を贈り、「オレいつか戻ります。色んな事覚えて。待ってなくても戻ります。」と。
森田は9割方できあがっていた卒業制作を放り出して行方不明になり留年決定。
花本教授は昔の先生に新しい本をつくるのに誘われて調査旅行と研究で一年近くかかる日本と中国とモンゴルを行ったり来たりしながらその先生の京都の大学で授業を持ったりするプロジェクトに誘われている。先生ははぐみをかっていて、このこに色んな国を見せたらどんな得にしてくれるのかワクワクすると、連れて行く提案をしてくれた。
はぐみは友達がいるから大丈夫と、モンゴルについていかないという。
真山は卒業しても竹本と同じアパートに住み、あいかわらず頻繁にキャンパスを訪れる。竹本の大学3年の誕生パーティに来て、目黒までバイクで帰る真山は、理花さんのマンションを外から眺めてから帰る。それを察している山田は「あきらめるってどうやればいいんだろう」と自問する。物理的に遠ざかる事だと思うけどなあ。真山の方も事情はあるけど,山田の気持を知っていながら、卒業しても結果的に山田の近くをうろうろするというのは残酷。
学園祭の作品をつくるはぐみはいろいろな人からの期待が頭から離れなくて行き詰まっている。そんなはぐみに森田はブローチをつくって、はぐみが見つけるようにそっと置いていく。見つけたはぐみを見守る竹本は、森田さんがつくったのかも、もしかしたら森田さんははぐちゃんが好きなのかもと教えた方がいいのか悶々とする。はぐちゃんは気づいているようだ。
真山は2年前のはぐちゃんと竹本が出逢った頃から竹本が好きになったことに気が付いていたという。「お前はずっと彼女の側に居てさ、すげぇ仲良くなったじゃん。あのむずかしい子相手にさ。そうやって少しずつ一緒に積み上げてきた信頼とかさそーゆー一番大事なモノまで「戦うのがイヤだから」とか言って全部放り出そうとしてないか?」と。
「何だってあんなヤツ(真山)をまだスキなんだ・」と山田に言う森田。「ダメだ」っていわれたけれどそんなあっさりキライにはなれないわ。それにこういう気持ちってつき合う対象になれなかったからって、消えて無くなれる程カンタンあものじゃない」そんな山田の言葉をきいて「恥ずかしいのは僕だカッコ悪いのも」と思う竹本。
花本教授が徳大寺先生と共にモンゴルから帰国。
森田と画材を買いに行ったはぐちゃん、帰ってきて「歩くの追いつくの大変で足いたいしおトイレに行きたいのに言えなくてなかなか、ごはんだって何でだか目の前だと何も食べらんなくて何が欲しいモノ何だったかも思い出せなくてぜんぜん買えなくて、だってなんだかずっと早く帰りたくってあんなのやだ修ちゃんといる方がずっとっずっといい」と花本教授にしがみつく。つまりはぐちゃん森田を意識しすぎている。「バカだなそんなの 好きだからにきまってるじゃないか」と竹本にいう花本教授。竹本の前だと自由にふるまうはぐちゃんを思い出し、「一緒にいると胸がつまってものを飲み込むのも苦しいようなそんなキモチを恋というのなら、ほんとにオレばっかり恋してたんだな」と思う竹本。切ないけど、そうだね。
8年生になった森田、竹本は4年になったのでとうとう同級生だ。突然森田の部屋を突撃してパスポートを取りに来たのは森田の兄。森田は仕事を引き受けてロサンゼルスに半年ほどいくという。誰にも何も言わないで。
お兄さんに「帰ってきて欲しい?欲しくない?」と聞かれて答えられなかった竹本、はぐちゃんに思わず「森田さんに帰って来て欲しい?欲しくない?」と聞くと「帰ってきて欲しくない。やりたい事全部やってみれるまでがんばるのがいいと思う」と。
森田さんの指導教官曰く「ヤツは才能を積載オーバーした暴走列車のような男だからの好きに走らせとくのがいいともう悟った。お前さん(はぐちゃん)の作るモノの事だけはよく気にかけとったよ。『あんなデカイもの作るヤツなんて自分以外で初めて見た』って言ってな」という言葉にふっきれたように作品に取り組むはぐちゃんを見かける竹本。
「ずっと一緒に居たいのなら彼女のことかついで歩けるくらいの人間にならないとダメなんだって」と、理花の原田デザインにはまだ戻らないという真山。そんな真山を「まどろっこしいな。2人で成長して行くって選択肢だってあるだろうに」と花本教授。真山と理花さんは1年以上会っていない。この潔癖さ!まあ少女漫画らしいと言えばらしいけど。
第25話、携帯がアンテナ付きのガラケーだ!
真山の就職した藤原設計事務所はちょっと格好いい先輩の野宮さん、勅使河原美和子さん、美和子さんを慕う山崎さん、犬のリーダーと個性的だ。原田デザインともつきあいがある。原田さんが亡くなって4年半。理花さんのアイディアを2人でまとめて原田さんがさわやかに笑顔でゴリ押しする呼吸ピッタリの会社だったという。今は浅井さんが助けているという。
藤原設計事務所の仕事で表参道のレストランを担当したときに、山田さんの花器が評判良くてまた頼みたいから山田さんに会わせて欲しいという野宮さんに、自分から頼むからとかたくなな真山。何かあると思った野宮さんたち事務所メンバーは、真山たちと花本研究室メンバーがお祭りを楽しんでいるところに突如乱入し、直接山田さんと交渉する。真山は野宮さんが自称彼女にすぐつかまるのに、ポイ捨てするようなところが気に入らず、山田にはしあわせになって欲しいので、軽いキモチで近寄ってくるヤツなんかにひっかかって欲しくないというが、軽いかどーかなんてお前にどうやって計れるんだと花本教授に窘められる。「これからずっと毎年一生一緒にいてやれないんだったら、お前には何も口出しする権利はないんだよ」と。ホント!過保護で、かつつき合う気も無いのに山田を縛ってるよ。
三日後真山が山田と花器をつくりに大学に来ると、野宮さんと山崎さんがすでに手伝いに来ている。野宮さんが真山は理花さん狙いであることをカマをかけられ、事務所のメンバーにバレる。
そして浜美祭の準備に忙しい山田さんとはぐちゃんを、野宮さんも真山も訪れる。2人はそれぞれ用事があって立ち去るが、忘れ物を思い出した野宮は、山田が真山の忘れ物のコートを着ているのを見かけ、焦る山田をそばかうどんの食事に誘い、そばが食べたいという山田を蓼科の蕎麦屋に連れて行く。
真山は2年前仕事明けに浴室で倒れている理花さんをベッドに運んだことを思い出す。体には火傷の痕。恐い夢を見て真山の手にすがりつく理花さん。もう1年以上真山は理花さんとあってないが、先日公園ですれ違ったのは理花さんだったことを花本教授から聞く。
理花と共同で仕事をしている浅井さんが突然倒れて入院した。一年ぶりにロビーであう理花と真山。「オレをまた原田デザインで使ってもらえますか?今なら前よりは役に立てるようになったと思います。」という真山に「藤原デザインはいい会社だと思うわ。浅井さんに手だすけしてもらったおかげで原田デザイン名義の仕事は全部消化したわ。だから今度は私に浅井さんのお世話をさせてもらいたいの」という理花。持ち札が足りないまま近づいてもこんな風に距離をおかれるだけだってわかっていた。だから近づかないようにしていた。と思う真山。浅井さんの用を済ませた理花がロビーに戻ると真山がまだ待っていた。降り出した雨に、車を借りて送っていくという。家ではなく大黒埠頭の螺旋をドライブする。
浅井さんは、理花さんはあの事故以来自分を責め続けて少しでも自分が「楽しい」とか「嬉しい」と思う事があればたちまち罪悪感を覚えて自分から遠ざけてしまうという。真山もそうやって遠ざけられたのかもと。原田さんが死んだのは雪道をスリップしたトラックに巻き込まれたせいで、運転していた理花さんのせいでは全くないけれど、雪が降ってきて皆が止めるのを振り切って、原田さんを早く家で休ませたいと、帰ることにした理花さんが一生自分を責め続けるのも解らなくはないけど。
藤原設計事務所は突如兄弟2人の社長が喧嘩して兄毬男の東京の会社と弟類二の鳥取の会社に分裂。理花を思う野宮さん、美和子さん、山崎さんの策略で、鳥取に配置されることを知った真山は、藤原設計事務所を辞めて原田デザインに戻る決心をして、理花のもとに行く。
真山のことをどうやって山田に伝えようかと花本教授が悩んでいる間に、野宮が山田酒店を訪れて、伝えると山田は倒れてしまう。そんな山田に学園祭に来た商店街の二代目たち五人が一斉にプロポーズし、驚いた山田は花本教授や竹本やはぐちゃんのところに逃げてきて「スキだとか何だとかそんなコト言わないでさえくれたらこのままずっと一緒にいられるのに」というと、花本教授に「山田さんみんなの気持には気付いていたんだ一応。でずっと告白されないようにずっと細心の注意を払ってたわけなんだね?」と突っ込まれる。それって真山と同じと気が付いて、真山はこんな気持だったんだと気が付く。
「俺は多分変わらないよ。お前が他の男探した方がぜんぜん早いよ」と真山にいわれて辛かった事を今度は私がみんなに言うの?花本教授は「みんなには正直に自分の気持ちを話すしかないよ。あとは向こうの決める事だ。『努力する』か『諦める』か、彼等が選ぶんだ。」このとき3つめの答えを僕は口にしない。ってのは誰の心の声だろう?花本先生?
浜田山美術大学学園祭最終日に就職試験にもう一つ落ちて戻ってきた竹本。自分には目的が無いことに気が付き、出品作を自分で壊す。
年明けても卒業制作ができない竹本は胃潰瘍で倒れて入院する。一週間くらい入院することになって卒業制作どうしようと悩む。駆けつけた母とその再婚相手カズさんは、学費ならあるから、ゆっくり休んでもう一年勉強する道もあるといわれる。カズさんは「お父さんが残してくれたお金があります。」という母も含めて、「『迷惑をかけるわけには・・』と言われるたびにほっといてくれと言われてるよーな気持になっちまってよ。オレは貸しを作りたいんでも恩を売りたいんでもない。縁あって一緒になったんだ。だからちゃんとあんたらの人生にかかわらせて欲しいだけなんだ。」という。「カズさんオレもう1年勉強させてください。おねがいします。」カズさん、思いを言葉にちゃんとできてすごく格好いい。結婚したのにこういう人生の分岐点で応援させてくれないなんてもやもやするものね。連れ子だから普通言葉を呑んでしまいがちだけど。
1年間行方不明の森田さんは、ハリウッドでピーター・ルーカス監督の「スペースタイタニック」という映画のモカデミー視覚効果賞を授賞していた。竹本の病室でTV中継を見て驚く皆。森田さんが戻ってきたら・・・と複雑な気分の竹本。と突然病室に現れた森田。花本教授に拉致されて大学に連れて行かれるが、卒業制作提出まであと4時間。真山と2人で帰る山田さんは真山に「今の会社はどう?このまま2人だけなの?」と聞いてしまい「とりあえず2人でできる範囲でかな しばらくは」という返事に傷つく。またまた自虐的なことを・・
彫刻科森田の卒業制作の森田が彫った純金のモカデミー賞像を見て倒れる丹下教授。8年かかったけれど平成14年度にしてとうとう森田卒業。
原田デザインが藤原設計事務所と仕事をするので、古巣に久しぶりに顔を出した真山は、野宮さんと話している山田を見つける。週一で山田の陶器を納めることになったという野宮に、「山田のことどー思ってるんすか?本気ですか?」と迫る真山に野宮は「本命の居る男はフッた女の世話なんかやかず本命にかまけてろよ」と言われる。ホント!山田の気持に答えるつもりがないならちょっかい出すなって!かつて野宮が女性からの電話を「今仕事忙しいんで」と携帯電話ごと女性も捨てる執着のなさを見ているので口を出したくなるのだが。
お花見で藤原設計事務所の面々から理花さんのことで絡まれている真山を見て、帰ろうとする山田。「山田さん大丈夫?送ってこか。それともどっか行く?」という野宮さんに「行きます。連れてってください。」と縋る山田。野宮さんは山田を連れて走り真山をまいてくれたが「気分悪いんだよね。こーゆーコトに使われるのって こーゆー風にすれば真山が追って来てくれるかもって?」帰るという山田に「山田さんはさぁ、こうやってゴネたりスネたりしながらあっちがダメになるの待ってるの?」「バレちゃってる片想いって不毛だけどラクだもんね。罪悪感で相手は優しいし、もうこれ以上ヒドイ事はおきないし」いやこれからどんどん山田が傷つくんだけどな。
山田を追いかけようとする真山を森田は止める。「もし何かあったら」という真山に「お前過保護」という。真山は森田と藤原設計事務所の美和子さん山崎さんと飲みながら、野宮さんのことを「そつがなさすぎるんです。何を考えてるか見せなさすぎるし」というと、美和子さん山崎さんは真山と似ているという。「野宮の本心はアンタが心配する程そう極悪でもないかもよ?」と。
野宮と山田は、ケーキとカプチーノを持って、観覧車の見える部屋へ。この観覧車は野宮が内装を担当したという。前の会社に居たときに初めてやった大きな仕事だという。山田は観覧車を見ると、みんなの策略で真山と2人で乗るハメになったことを思い出す。「さっき(野宮が言ったように)二人がこわれちゃうといいとずっと・・・」泣きながら眠って起きたら朝の9:03
翌朝、藤原設計事務所を野宮を訪れて、勅使河原美和子さんに頼んで、山田を家に連れて行くのにつき合ってもらう。昨夜お花見で山田が飲み過ぎてと勅使河原美和子さんがいうと、山田の父も安心した。真山は山田さんを送っていくから一枚噛んでとの野宮さんの電話を聞いて帰った。真山は、野宮さんがその観覧車をよく見ているのを知っていた。「乗ってみますか」と声をかけても「いやいいよ。あれは外から眺めるもんだ」と。今度会ったら初めて観覧車に乗った感想をきいてみよう。と。
自分の幸せを願うということは自分じゃない誰かの不幸を願うこととオモテウラのセットになっている時があって・・と物思いにふけっている山田に、森田さんは「ずーとお前ことばっか考えてたんだぞ(森田さんと真山は)。だからなげやりなことはしてくれるな。たのむから。」という。「自分は急にどっか行っちゃっていちねんも連絡ひとつよこさなかったクセに」と泣く山田に「ごめんな」と手を繋いで二人で帰る。ホント森田は人の事言えるか~
竹本は、はぐちゃんが、卒業したら「はぐはいなかに帰る。そこでここにくる前みたく、畑とニワトリの世話をしながら毎日絵を描く。絵は修ちゃんの知りあいの画廊さんのとこに時々おいてもらう。ずっと描いていられればそれでいい。ホントはみんなと一緒にずっとこっちにいたいけど、東京はお家賃高いし、はぐは修ちゃんに迷惑かけたくない」といっていたことを花本教授に話す。「はぐはそう言ってた」か」と花本教授。
善意のアドバイスに従って作品を描き分けているはぐちゃんに、これは○○展用、○○賞用と指摘した森田は、花本教授の元に走り、「何でアイツはあんな絵描いてる?」「日本の中でそこそこ描いていくには悪くない」「なんでやめさせない」「はぐが決める事だ」「アイツはもっとデカイ場所で生きてくべき人間だ。100年たっても300年たっても自分が死んでもずっと生き続けられるモノを作れんだぞ」「かもしれん。だがそれ以外何も残らん人生になる。美術史に名前の残ってる女性の作家がどんだけいる?その中で幸せな人生を送れた人間がどんだけいる?どんだけ描いても何も残らんかもしらん。それでも手を休めるコトはできん。一生心が休まるコトがなくなるかもしれん。それを果たして幸せって呼べるんだろうか」「それをケアすんのがアンタの役目だろう」(「オレの役目だ」とは言ってくれるタイプじゃないよなぁ・・・お前の王子さんは)と心の中で森田のことを思う花本教授。はぐは天才型、森田さんも天才型、理花さんとだんなさんは天才型同士のカップルでうまくいっていたけど、森田さんはすごく鋭くて創作の天分溢れる人の気持がよくわかるけれど、破天荒過ぎるような気がする。花本教授のような創作の天分はないけど、芸術をよく理解している人がプロデューサーとしてパートナーになるのが上手くいきそうな気がする。でも花本教授には自分には果たせなかった夢をはぐを使って果たそうとしているのではという負い目がある。
教授の部屋を片付けていた竹本は、泣いているはぐちゃんを見る。やりたいことがあって泣くはぐ、やりたいことが見つからない自分。自分にははぐちゃんの涙は止められない。
相変わらず難航している竹本の就職、浜美卒の仲間でつくった小さい会社に教授の縁で決まったと思った途端、その就職祝いの席で会社が倒産したことを知らされる。竹本の中でなにかが折れた。
藤原設計事務所の鳥取の会社を放り出してきた類二社長の後始末で、半年鳥取にいくことになった野宮と山崎さん、山田はそうとは知らずに外で言葉を二人と交わした後、事務所で美和子さんから聞く。
一方竹本は雨の中、財布だけを持って一人で自転車で走り出す。
携帯も持たずにいってしまったので、美大の皆は、誰も行方を知らず連絡もできない。竹本の就職活動全滅とか、浜美祭で作った青春の塔が崩壊したこととか、せっかく研究室のコネで内定した会社が直後に倒産したこととか思い当たることがありすぎて心配する。捜しに行こうとか警察に行こうという人たちに「自分を探しに行った人を本人より先に見つけちゃったら帰って来れなくなっちゃうでしょ!?」と花本教授。教授も自分捜しに7回もでかけて、その度に同居していた理花さんと原田さんに探し当てられて連れ戻され、ひけなくなってしまうという黒過去を徳大寺先生にばらされる。
竹本は通帳を置いていったので、記帳した森田と真山と花本先生は、竹本が生きていることを確認。花本教授は今月のバイト代といって入金する(入金は通帳だけでもできるんだよね)。森田も一瞬大金を入金したけれど、「こんなに援助したら『自分探し』の意味がなくなっちゃう」と言われて降ろす。暗証番号を森田の誕生日にさせたので、降ろすこともできることから、かつて結構金を借りていたことがバレて、皆に非難されその分入金して返す。ちょうどキャッシュカードでお金を下ろそうとしていた竹本は残額が一瞬変わったような気がするが,ご利用明細しか見られないので、残高が微妙に増えた気がするだけだった。
森田は兄に自分探しだと騙されて、新しい仕事を入れられてまたカナダに。わけのわからないピーター・ルーカス監督に映画のイマジネーションを搾り取られ、自分の出した5千羽のカラス天狗をのアイデアをフルCGで作るハメになる。撮影場で小さな女の子のために梁の上の猫を助けてやってはぐちゃんを思い出して、5日目にして脱走して帰国。
賞も留学も断って卒業したら田舎に帰るというはぐみに幸田先生は「やれば全てかなえられるだけの力を持ってるくせにずるい」という。花本教授は幸田先生を窘めたのち「はぐは『自分がどれだけ進めたか』を自分で見極めたいんだよ。でも『どれだけ進めたかどうか』は自分以外の世界にぶつけてその反響で計る方法もある」という。幸田先生は画家志望で単身パリで何年も勉強を続けて身体をこわすまでがんばったのではぐを見ると自分を重ねてしまうんだろう。どっちも正しいんだ。大事なのはどっちの道を選んでもそれを『言い訳』にしない事だよ」と。
松島で自転車のチェーンが切れ、更に空腹でお寺の境内に倒れている竹本を、拾ってお弁当をわけてくれたのは、お寺や神社を修復する修復士グループの一人しんさん。そこにやってきた棟梁が納期の迫っている他の寺院の応援に二人行けといって、人手が足りなくなったのを見て、竹本は自転車の修理代を稼ぎたいので働かせてくれと頼む。実働16時間強で日当4200円だが、自分で作るとは言え三食たっぷり食べられ、蒲団で寝られる。朝は男七人の朝食とお弁当を一気につくり、現場ではクズ石を運んだり皆の準備をするくらいしかできないが。竹本のママチャリは、がたがきてもうダメかもしれないと言われる。ママチャリは長時間漕ぐとお尻に来るので、しんさんが見つくろってくれた自転車は4万3千円。10日と少しで貯まる金額だ。
苦戦しているはぐちゃんに、花本教授は夏の浜美の子供絵画教室の先生をやることを提案する。突然カナダから帰ってきた森田が乱入、森田がカナダに行っていたこと自体を知らないで、花本教授の言葉で初めて知るはぐちゃんと山田に落ち込む森田。
作品を藤原設計事務所に届けに行った山田は、理花さんと鉢合わせをする。真山がここにいて二人が一緒の所を目にしなくてよかったと思う山田。理花さんも山田の名前は知っているようだ。杖をつかなければいけないのに細いヒールのハイヒールを履いていて、ヒールが壊れたのを山田は治してあげる。花本教授の元に戻って、理花さんがガリガリに痩せて自分を大切にしてないように見えると酔ってくだをまく山田。死んだダンナが買った靴であることを山田に教える花本教授。
修復士グループでのアルバイトは、竹本にとって居心地が良いが、いつも敵意を見せる六太郎という若者は、「オレをみろ、16から働いてんだぜ!?悩んだり迷ったりオレにゃあそんなヨユーもなかったよ。お前みてーなのはただの甘ったれだ」といって棟梁に「不幸自慢禁止」と言われるが、棟梁は竹本に「お前さん明日ここをたちなさい。答えなんざどーでもいい。ハナからそんなものはねーんだ。『自分でほんとうに気のすむまでやってみたか』どーかしかないんだよ。」と。
山田に会ったという理花さんは、器を頼みたいから真山から頼んで欲しいという。が、真山に「山田さんは忙しいから」と仕事の仲介を断わる。理花さんは、藤原設計事務所で山田さんがタイミングよく逢えて仕事を直接頼む。森田と一緒に花本教授の手伝いをしていた真山は、美和子さん電話報告を受ける。「いっそもうアンタとリカさんが一緒にいる所を隠さずちゃんと見せてやった方がアキラめがつくのかもよ」というが森田は「逆効果じゃないか?だってお前まだリカさんには男として何とも思われてないんだぜ!?」と真実の斧を切りつける。でも美和子さんは「もういっそ見せつけてやるがいいわ。真実を!!ありのままに!!リカさんの気をひきたくてぐるぐると1人でまわってワケわかんなくなっているカッコ悪い姿をたーーーんとね」そこにやってきた山田は「リカさんと仕事をする事に決めたから」という。「心配してくれてリカさんに先に断ってくれたんだよね。私がっリカさんに何かすると思った?」といいつのる山田を止めようとして屋上から放り出すはずが逆に投げ飛ばされて大怪我をする森田。しかしここまで妄想がつのると山田、やっぱりリカさんとは離れてる方がいいのでは。
かつて自分が日本一周をした長距離用の自転車をしんさんは貸してくれた。かつてしんさんも修復中の寺の竹林に倒れていたという。自分の使った日本地図と予備のチューブまでくれて、8月いっぱいここにいるから自転車を返しに帰りに寄ってという。
子供絵画教室の生徒、倉持一樹君は、私立の中学校に入るためのアピールとして賞を取りたいからどこを直したらいいかとはぐちゃんに聞く。夏休みの思い出というお城の絵を一目見てはぐちゃんは写真見て描いた?という。母親は忙しくてどっか連れてってくれ何て言えない。勉強はすごくできるのだが、運動は苦手で病欠も多かったので入試を有利にするにはあとはもう絵の賞関係くらいしかないのだ。
『好きに描け』って具体的にどーゆー事なのさ。担任は『子供らしくないって』「子供らしい絵ってどんなんだ?『無邪気な』ってことか!?どーすりゃ無邪気なものが描けるんだ?いやーまてよ?『どーすれば『無邪気なもの』が!?と言っている時点でオレにはもう『無邪気』ではないじゃんか。とぐるぐるはまっている。「何でそんなに賞にこだわるの?」「オレは志望校に絶対受かんなきゃなんないの」「お母さんがとれっていったの?志望校絶対受かれって?」「母さんはそんなコト言わない。志望校だってオレが自分で決めたんだ。オレやりたい事があるからそこから逆算するとそこ入っておかないとマズイんだよ。で母さんは『がんばれ』って応援してくれてたんだ。なのに親戚のおばさん達が無責任に『リコンして片親だと私立は不利だ』とか言ったのを真に受けて『どうしよう母さん一樹の足をひっぱっちゃったの?』オレはだからぜったい受かんないとダメなの。でいいかげんな事言った叔母さんたちにも『楽勝でしたよ』って言ってやんないと気がすまないの。母さんのためにもオレのためにも」
まわりから賞をとることを期待されている自分、そのために描いていることを森田に指摘されたこと、好きに描いてごらんと花本教授にいわれたことなど自分と重なって涙を流すはぐに、あわてる倉持君。
2人で泣き疲れたところで手を繋いで花火を見にいく。後ほどもう一度倉持君が持ってきたのは、天の河というタイトルで、ナイアガラの花火をみる2人だった。
そして竹本の旅は続く。フェリーに乗って北海道へ。サイロに干し草を詰めるアルバイトをしたりしながら、辿り着いた最北端稚内。帰りに修復士たちの現場によって、しんさんに「自転車はあげるよ。」と言われてそのまま乗って帰ることになった。「ウチへくる気があるなら学生のうちに普通免許取っとくといい」と。そして8月30日。作品を前に眠っているはぐちゃんの元に竹本は帰ってきた。
大宮八幡の秋祭りにみなで繰り出して、はぐちゃんと2人になった竹本は、はぐちゃんに「地の果てってどんな所だった?」と聞かれて「何もなかった。でも明るかった。空がすごくきれいだった。君に会いたいなぁと思った。だから帰ろうと思った。はぐちゃんオレは君が好きだよ」「うん。竹本くんもどってきてくれてありがとう」と答えるはぐちゃんに微笑む竹本。
はぐちゃんはなんとなく竹本のそばに来なくなった。気にしなくていいのに。彼女の答えはわかっていた。いわなきゃよかったかな。でもぜんぜん後悔とかない。
理花さんと理花さんの事務所で仕事をする山田。つい目の前の理花さんと真山のことを想像してしまう。そして真山が帰ってきて2人のやりとりに1人で心の中で葛藤する。2人が大した話もせず4年も一緒に仕事していることにももやもやする。花本教授に聞いてみると「原田となんかほとんどしゃべってなかったよ。すごい仲良かったけど。リカはさ、すきなヤツといる時程しゃべんなくなるんだよ。」
次の機会にも2人の仕事場を訪れる。森田には「わざわざあいつらの一緒にいる所を目に焼きつけにいくんだからな。でもそうでもしなきゃ思いしれないんなら行くがいいさ」と言われるが。話の途中でしゃっくりが止まらなくなって台所に行く理花さんに、「うちのいなかじゃこーやって止めるんです。」と砂糖水を出す真山。やけになって夜の11時半に夜食のカツ丼大盛りを3人分注文する。
この山田の心理は理解できない。真山が理花さんをどれだけ大事にしているかわざわざ見にいくの??
鳥取に行って以来野宮は山田さんと連絡を取っていない。山田さんが携帯をもっていなくて実家の父親はおっかないというのもあるが、「まだ子供を傷つけたコトないから『『気にはなるけどおっくう』」だという。山崎さんは「何でお前の恋愛ってさキズつけるのが前提なの?オレは好きなコができたらうんと大事にしよう・・ってずっと思ってきたぜ?普通ソーじゃないのか?」そーじゃないの???目からウロコが。
美和子さんに電話をして様子を聞くと、山田は週末は原田デザインにいるという。自分をミンチにする機械に自分から飛び込まないといけないくらい真山のことが大きかったのかい?と思う野宮。
バレンシア美術館の増築部コンペに優勝したのは、理花さんが原田さんと取り組んだ最後の仕事だ。しばらく話がとまっていたのが動き出した。完成まで活動をスペインに移すと突然聞いて「ここはどうする気ですか。オレには何の相談も無しですか」と、山田が聞いている前で理花さんに迫る真山。「あなたも行くのよ。仕事なんだから当然でしょ」と理花さん。理花さんが立ち去った後、パソコンの履歴から理花さんが故郷の小樽の天気予報のライブカメラを頻繁に見ていることを山田に話す真山。その横顔はやさしい顔をしていた。「連れてってあげるといいよ。彼女のこと」と思わず口にする山田。
そこに野宮から電話がかかってくる。山田は今リカさんの仕事で原田デザインにいて、真山もいると聞いて「山田さん大丈夫???」という野宮に山田はハイテンションであれこれ話す。電話を切った野宮は車で深夜に東京へ向かう。お~い野宮さん、鳥取から東京へ行くなら、朝まで待って飛行機で飛んだ方が早いよ。
東京に着いて藤原設計事務所に顔を出すと、なんと気を利かせた美和子さんが、山田に鳥取の野宮まで届け物を頼んでいた。折り返し鳥取に戻る野宮。美和子さんから連絡を受けた山崎さんは、荷物を届けてすぐ帰ろうとする山田を、一日鳥取観光に誘う。やっと戻ってきた野宮は、山田の手を握り、「帰んないで。起きてから話すからここにいて」と倒れて寝込む。山崎さんが隣に運んだエアマットで眠る山田。目が覚めた野宮は、頭隠して足隠さず寝る山田を目にする。朝ご飯後二人で砂丘を見にいく。昨日はどこにいってたんですかという山田に「君に会いに行ったんだよ(東京へ)」山田が電話切ってからめそめそしてたのがわかると。
東京に帰る山田を駅まで送る野宮と山崎さん。山崎さんは野宮に「告れ」というけれど、「暴れ馬はガンガン走らせた後疲れ切った所をつかまえるのが定石です。」と野宮。野宮さん意地が悪いね。でもまあ山田があまりにも自虐的すぎるんだけど。君の大好きなあの男は他の女と遠くに行ってしまうよ。そしたらあとは簡単だ。君がぺちゃんこになった頃に現れてもっともらしい顔で君のハナシをきいてやさしいコト言ったりちょっと叱ったりするだけでいい。簡単な事だ。だから何も言わなくていい。と心の中でつぶやきながらもこれ以上泣くであろう山田を想像して胸が痛む野宮は「どうしようもなくなったらオレを呼びな」「は・・・はい・・でも何でですか?」「何でっ---って・・・君が好きだからだよ」と思わず言ってしまった野宮を、売店の陰から山崎さんがしっかりみているのに気がつく。いいねえ。恋愛百戦錬磨の野宮が、山田は何もしなくてもそのうち簡単におちてくるはずなのに思わず告ってしまう。
そしてまた浜美祭の季節が来る。ベルジェール教授からの留学のお誘いメールもきているのに、はぐちゃんは卒業したら長野に帰るという。幸田先生は「あなたもホントにそれでいいの?彼女あなたに悪いと思って気をつかってるだけなんじゃないの?」花本教授に愚痴る。
はぐちゃんにムンクの絵を紹介して、昔、原田さんとリカさんと3人でムンク展にいったことを思い出す花本先生。その夜見たのは原田がリカさんを呼んでいる夢。事故で焼けてしまった原田の遺体を集めて葬儀に出したのは花本先生。重傷の理花さんは見ることも叶わなかった。「自分で死んじゃ駄目だ。原田の所へ行けなくなる。」という花本先生の言葉に、原田の後を追うこともできなくなり吐いては食べて生きようとし、痛むカラダで原田の残した仕事にのめり込む理花さんに耐えられなくなった花本先生。そんな日々に理花さんの方から私たち離れましょうといったのだ。
夜中に起き出すとはぐちゃんが図書館で借りたムンクの画集を見ていた。幸せになりたいと思う度生きているのが苦しくなる。自分には大それた願いな気がして。そんな日が自分にはもう来ない気がするから。だから今出来る事なんてただじっとこの夜をやり過ごすことだけだけど・・・このこがオレをここまで歩かせてくれたように今お前の隣にいるその男がどうかお前を明日へ運んでくれますように。
故郷からの知人を上野で見送る理花さんと真山。札幌行きのカシオペアを見守る理花さんの表情と、パソコンでしばしば故郷の天気を見ていた理花さんを思い出して、真山は理花さんと二人で発車間際のカシオペアに乗る。
上野発16:20、札幌着朝の9時。車で理花さんの故郷、小樽に行く。父が死んでから初めて訪れるという。ここを去るときは家を壊していく。誰もいなくなった家はそのままにしておいたら雪でつぶされて春には野ざらしになってしまうから。理花さんは見届けることができず原田が残って壊してくれて「自分を泣かせてたヤツ(父親)のために泣くな ここは俺があとかたもなくぶっこわしてやるから もうお前には俺がいるんだから帰る場所なんてもう他にはいらないんだから」
その夜二人は結ばれた。明け方理花さんが1人で出て行こうとすると真山がバッグにつけた警報が鳴る。「アンタがこういう事オレに許すのは自分を傷つけたい時か何かものすごい勢いで別の事考えている時だけだ。言えよ。何考えてる?」「『一緒に行こう』なんて嘘をついてチケットは1人分だけ、1人で住むアパートを向こうで探して」真山は理花さんのメールもFAXも郵便も書類もぜんぶチェックしたという。すごい執着だね。まあこうなる危険を真山は感じてたんだろうけど。「原田さんが残した仕事を全部片付けたら全部終わりにしようとか考えてんだろ!?」スペインでの仕事が最後だ。「オレに関わったのが間違いだったな。どこまででもつきまとってやる。カンタンに死ねると思うなよ!?頼むよちゃんと生きようとしてくれよ」と涙する真山を思わず抱きしめる理花さん。
その翌々日真山に見送られて理花さんは成田からスペインに向けて飛び立った。真山が事務所に戻ってメールをのぞいてみたら彼女が探していたアパートメントの条件が2ベッドルームの2人用に変わっていた。
スペインに行く前に2人の間には何かあったのを山田は感じている。そんな山田を美和子さんはプールとマッサージとお風呂とアカすりとビールと食事の健康ランドフルコースに誘う。飲み潰れた山田さんの隣にいるときにタイミング良く野宮から美和子に電話がかかってくる。理花さんと真山に何かあったらしく泣いていることを伝える。自分に電話をしてこない山田に腹を立てる野宮。後少しで帰れるから1人で泣いててくれよと。だからそれまで他のヤツ(男)の前で泣かないでくれよ?と。
将来に備えて教習所に通う竹本は金がない。植え込みの葉ボタンを見て食べれるかと考えているところを真山に見つかって奢ってもらう。真山こそ就職したのになぜこの安学生アパートにいるのかと竹本が聞くと、まだくるかどーかもわからないイザって時のためだという。大人になってイザそのチャンスが来たときに「飛び込めるか」「飛び込めないか」って単純にお金の「ある」「なし」にかかってくる事がほとんどな気がするんだよね。」それはある!世の中お金で解決すること、お金がないとできないことはいろいろある。「それにさ、もし好きな女に何かあった時にさ『何も考えないでしばらく休め』って言えるくらいはなんかさ持ってたいんだよ」と。
なぜか美和子さんのいない事務所に届け物に来た山田。真山と理花さんを思い浮かべ痛む心に「どうしようもなくなったらオレを呼びな」という野宮の言葉を思い出す。そこにドアが開いて、思いもかけず野宮さんが入ってくる。犬のリーダーに挨拶した後、「山田さんにもただいま」と頭に手をかけたところでまわし蹴りを食う野宮さん。ホントは電話をかけたかった。来て欲しいコト聞きたいコトもたくさんあった。そんなコト考えたら真山をずっと好きだった気持がみんなウソになっちゃう、と自分がいやだった。どうしてそんなに頑ななの。真山が山田さんを振り向いてくれる可能性はもう0だよ!!とそこにリーダーがリードを持って追いつく。そこに「いいねえリーダー山田さんとお散歩かい?」とやってくる野宮さん。恋がこんなにつらいなら二度としたくないと本気で思った。野宮さんが帰ってきてくれてとても嬉しくてとても苦しい。
はぐちゃんも竹本も浜美祭に向けて作品作成中。悩んでいるはぐちゃんの様子を伺いながら何も言わずに森田はまた別の仕事に行ってしまった。「今話をしないとこのまま道は離れていくよ」という花田教授に「仕方ない。離れるもなにも、もともと近くもなかったさ」と。
スペインで一緒に仕事中の建設デザイナーマック☆カルロスから熱烈アタックを受けて憔悴している理花さんは番犬代わりに真山を呼び寄せる。そんな真山にアドバイスをする山田。思い出しながら外を歩く山田を、リーダーの散歩を口実に追いかけてくる野宮さん。
森田忍の父は小さいけれど活気のある会社、森田技研の社長、森田司。物作り大好きで次々と新しい機器を新発明。しっかりもので常識人、幼なじみで親友の根岸達也と経営をしている。入社試験はこの部屋にある材料を使って、3時間で飛行機を作って一番遠くまで飛ばせたヤツを雇うと、破天荒。それに嬉々として参加する小学生の森田。森田のつくった飛行機が軽々と宙を舞うのを誇らしげに見つめる父に、憧れの熱を父にぶつける応募者の若者達と、飛ばない飛行機を抱えて立ち尽くす根岸達也を見つめる兄のカオル。セメント工場跡地の穴に落ちた忍を自転車に乗せて医者に連れて行く父、実は自分も父に知らせるために神社の石段からおちて足が痛むのだが、心も痛む。そんなカオルをおんぶして連れ帰ってくれたのは根岸達也さん。忍はお父さんにそっくりで、お父さんも好き放題に生きているけれどみんなに愛されていたという。この痛み解るな~~天然でかつ才能があって皆に愛される人、その影に霞む人。
全てを任されている根岸は特許の名義を全て法人に書き換え、株の増資の準備を整え、そして決行の日。森田技研はフロイド・エレクトリック社が経営権を乗っ取った。森田司は技術者として新会社に迎えられ、社員も今まで以上に研究に専心できるように充分な資金と報酬を約束するという。根岸は現場は何も変わらず森田はもっと大きな資本の元で自由に研究に専念できるという。しかし森田は「オレは金が大好きだが、他人の金で動かされんのはキライなんだ。みんなを頼む」といってでていく。不治の病にかかっていた根岸は倒れる。
フロイド・エレクトリック社は根岸がなくなった場合の権利は、全て会社に移行されるという。森田司は「オレは許さねえぞ.死ぬまで恨む。っつ-か100ぺん生まれ変わっても恨む!!だからお前らは恨むな。お前らは前へ進め」と子供達にいうが、兄カオルは納得できない。カオルは根岸のおじさんの気持がわかるのだ。自分にも自分にしかできない事がきっとあると思いたかった。
カオルの傍で夢から覚める森田。
浜美祭初日。無事作品が出来てはぐちゃんから褒められた竹本は、卒業後修復士になることを話す。長野に帰るというはぐに竹本は「はぐちゃん君はどうして本当の気持ちを言わないの?」と問うが「大好きなひとの大事な人生を変えてまで選ばなければいけない道って何???私はそれとひきかえに修ちゃんに一体何をあげられるんだろう」
森田忍とカオルの準備が出来た。かつて父親の会社を乗っ取ったシカゴの会社に、城山さんと共に乗り込み、「今日からオレたちが新役員だ」と宣言する。会社の株35%はルーカス・デジタルアーツが持っているのだが、だからこそ忍はハリウッドでピーター・ルーカス監督の元で働いていたのだ。社長の豪邸は会社名義、これから賠償の訴訟も起こすという。大声で勝利の笑い声をあげならが、カオルは心の中で「父さんごめんなさい(こいつを呪うのも恨むのもオレの役目だという)約束を守れなくて。大切なものを守れなくて」と。
復讐は終わった。そしてカオルは姿を消した。城山さんはカオルは中途半端に優しいからという。カオルには想像力があるから松田さん(乗っ取られた会社でいつかカオルと忍が乗り込んでくることを信じて耐えていた)の今までの長いシカゴでの苦労と、我々部下全員の積み重ねた努力とか、ずっと慕って側を離れなかったあなた様の事が今頃ぐるぐる頭の中をよぎりまくって自分を粗末にすることすらできずにいらっしゃるはずだと。
スペインで理花さんにアタックするマック☆カルロスに、真山は毎晩飲みながら牽制しまくって理花さんの安眠を確保する。ただし理花さんと部屋は別々。
浜美祭初日に、搬入中のガラスパネルがはぐちゃんの上に倒れかかって大怪我をする。はぐちゃんは花本先生が付き添って救急車で運ばれる。山田と竹本は大学で連絡をまつ。
はぐちゃんのケガは頭を10針、右手を13針。はぐちゃんに「聞かない方が余計こわい」といわれてはぐちゃんの現状を話し始めた花本教授。傷は指のつけねから手のひらまでで、腱が切れてしまっていた。ゆ着や二次障害を防ぐには2ヶ月以上の入院と根気強いリハビリが必要だという。山田さんと竹本もベッドの外で花本教授の話を聞く。
はぐちゃんは痛み止めを拒否した。もし右手に痛みが感じられなかったら「神経がつながってない」という事で再手術は一刻も早い方がいい。だったら今はどっちなのかを早く知らないと、という。そして痛みで気を失う。
リハビリを続けても指先までの感覚が戻らない事もあり、筆を持って以前と同じように描けるようになるかは不明。しびれ・感覚障害はこのままずっとつき合っていかなければならないかもしれない。努力だけではどうにもならないかもしれない。しかし努力をしなければ確実にこのままただ失うんだ。と花本教授。
「私なんかに彼女に何かしてあげられる事なんてあるんでしょうか」「彼女を見ててふっとすごく遠く感じたんです。背負ってるものが違いすぎる。覚悟っていうか、ありきたりなコトバなんだけどほんとうに世界が違うんだって」野宮に話す山田に「みんな多分そう思ってるよ。で全員で彼女を遠まきにするんだ『私には何もしてあげられそうにないから』って。多分彼女がひどく苦しむのはここから始まるリハビリだよ。山田さん。君は残りなさい。残んなきゃダメだ。友だちなんだろ?」と。「ありがとう」といって帰って行く山田。
リハビリを始めたけれど、指先に触ったものがタオルか紙やすりなのかさえもわからずにショックをうけるはぐちゃん。土手の花を摘んで持っていった山田と竹本もショックを受けるが、「焦らないこと、諦めないこと、それはオレたちもなんだよ」と花本教授。
はぐちゃんのお父さんが面会に来た。父には妻と春に産まれる予定の赤ちゃんがいた。かつて「はぐは(卒業したら)いなかに帰る。でそこでここにくる前みたく畑とニワトリの世話をしながら毎日絵を描く」といったこともダメになった。
はぐちゃんの左腕はストレスで噛んでしまうので痣がたくさんできた。しばらくするとその痣は先生の腕に移った。はぐちゃんのために先生は絶対に揺るがないと決めたのだろう。
しんさんから新しい現場盛岡に三月の中旬には合流して欲しいといわれて、竹本は迷っていた。はぐちゃんを置いていく?でもこのまま東京にいてはぐちゃんをはげましてリハビリを手伝って、シフトを自由に出来るビルの清掃とか道路工事とか深夜のコンビニとかで東京で1人でやっていけるくらい目一杯バイトを入れたら、結局はぐちゃんのケアなんてできない。そして彼女が治ったとしてその後自分は美大を卒業したのに就職もできてなくて手に職もついてなくて三十歳を超えていて、今度は自分の存在自体が彼女の重荷に変わる。真山の「好きな女に何かあったとき『何も考えないでしばらく休め』って言えるくらいは持ってたいんだよね」という言葉の意味を思いしる。先生の腕の赤い染みが自分に移ることはない。
「このまま治らなかったら?描けなくなったら?」と花本先生にしがみつくはぐちゃん。「絵を描く」ということだけが「私」を「守り」「生きさせて」くれてたんだと、ひとりぼっちだった子供の頃を思い出す。
突然帰ってきた森田。山田が真山を通じて必死で探して連絡をしたのだ。花本先生がちょっと離れたところに現れる。花本先生がはぐちゃんを探しているところに竹本がやってきて「森田さんが帰って来たんです」と告げる。
兄と住んでいたアジトにはぐちゃんを連れて行った森田。「生きててくれればいい。一緒にいられればいい」と森田ははぐちゃんを抱きしめる。
はぐちゃんが森田といることを悟った花本先生。大学の部屋はすでに片付けの真っ最中だ。「はぐには言うなよ。こんなコト知らんで決めて欲しいと」と竹本にいう先生。とりあえず全部の時間をはぐのリハビリにぶち込もうと思って、浜美を3年休職ということにしたという。まさかこんなギリギリで王子さまが帰還しちまうとはな。もしはぐちゃんが森田を選んだら・・旅にでも出るという。「何ではぐちゃんに『オレを選べ』って言わないんですかという竹本。「オレは言いましたよ。希望なんてカケラもなかったけど、全然ダメってわかってたけどちゃんと言いましたよ」という竹本に、先生は「病院に行くよ。はぐが戻ってくるかもしれん」と。そのころ森田の部屋にいたはぐは、手が腫れてて動かないから病院に、修ちゃんのもとにもどらなきゃという。もどらないと手が死んじゃう。それだけはいや。絶対にだめ。描けなくなったら私も死ぬというはぐちゃんに「わかった」と送っていく森田。
森田は、先生に殴られたという。「ごめんね」というはぐに、「そっか、お前決めたんだな」と。「見てて。ぜったいに治すから。治らなくても何も残せなかったとしてもいいの。わかったの。描きたいの。これ以外の人生は私にはないの。ゆうべ言ってくれたことほんとに嬉しかった。私もずっとあなたの事見てる。お兄さん見つかったらつかまえてちゃんと言うんだよ???ゆうべ私に言ってくれた事。今度こそ大きな声で」
竹本は森田を、大学の花本先生の部屋に森田を連れて行く。花本先生ははぐちゃんに「『知らせるな』『自分で決めて欲しい』」と言ったことも。「ついに本気出して来やがったな。勝てねーじゃねーか。」
病室に戻ってきた花本先生にはぐちゃんは「修ちゃんの人生を私にください。私描きたいの。ずっと。だから一緒にいて。最後の最後まで」と。
森田と竹本は男2人で寝た翌朝、「どー考えたって彼女を幸せにできんのはオレでもアンタでも無い!!先生なんすよ!!」と竹本。才能があるといってみんな自分を好いたり憎んだり恨んだりあげくに黙って離れていく。虚しくてはぐちゃんを道連れにしようとしたことを森田はわかっていた。カオルは天然で才能のある森田に嫉妬していたけれど、森田は森田で葛藤していた。「あのおっさんの方がアイツを幸せにできるだって!?そんな事オレだって解ってたんだよ最初っから」となぐりあう2人。森田ははぐちゃんと両思いだけど、はぐちゃんを幸せにはできないような気がしていた。
森田から「ぜったいに治してやってくれ」と札束の詰まった段ボールが大学の花本先生の部屋の前に置かれた。一束だけ借りてまだ窓の下にいる森田の残りを投げる。「ゼッタイに耳を揃えて返す!!金は返すがはぐは返さん。絶対に治すよ。で絶対にまた描けるようになるから安心しろ」と。「お前さアイツの事好きなのか!?」と大声で聞かれて「ああ、好きさ。大好きさ!!」と、山田も丹下教授も学生も聞いていることを忘れて叫ぶ花本先生。
花本先生がはぐちゃんの事をそういう目で見ているとは思わなくて動揺する山田。そこにスペインからやってきた真山。丹下先生からすでに事情は聞いたという真山と2人で話す山田。はぐちゃんは山田の思ってたとおり森田さんが好きなんだと思うという真山。生きる意味が何にかかってるかだと思う。それが『恋愛』の人間もいれば好むと好まざるとにかかわらず何か『やりとげねばならないモノ』を持って生まれてしまった人間もいる。みんなその瞬間はもう本能にジャッジをゆだねるしかないんだろうな。と。
空の部屋にたたずむ花本先生の元に理花さんもやってきた。
山田から事情を聞いた野宮は「これが『真山が君を好きになるスイッチ』だとする。押したらそのかわりリーダーが『一生暗い部屋に閉じ込められて二度と誰にも会えない』としたら?」なんという例え!「押せないなら君は『真山がキライ』って事になるねぇでも違うでしょ?そゆコトじゃないの?」泣き出す山田。またまた野宮さんはマゾでサド!
影で聞いてる美和子さんと山崎さんは「あれ言いながら自分で傷ついてるわよねぇ」「『もう真山の事考えンのやめろ』って言えればいいんだけどね」と。
カオルは城山に電話をして会社に戻ることにした。森田はピーターの会社にいくという。はぐちゃんに「オレが何もかも投げ出そうとしてた事見抜かれた」ともいう。「逃げないで一緒にあがこう」と言われたと。
野宮は「ここまで来たら正直に行こう?計算とか全部無しでさ。オレはアンタが好きだ。かといって何もかもをガマンするのは無理。正直真山のこといつまでも引っぱられるのはツライ。でもそれって離れてて解決するもんでもないとオレは思う。一緒にいよう。ケンカしてもいいじゃない。ちゃんと話をしよう?」えらい!!
最後の夜、竹本の自転車に2人乗りで買い出しに行くはぐちゃん。「きっと治す。治さないと修ちゃんに何も返せなくなってしまう」というはぐちゃんに「それは違うよ。何も返したりしなくていいんじゃないかな。それは先生が自分で見つけるべきモノであってはぐちゃんがあげるものではないんじゃないかな。そして先生はそれをちゃんと見つけられる人だとオレは思う」うん、返さなくていいと思う。
翌朝、おみやげの買い出しにいくときにはぐちゃんを見かけた。さよならはゆうべすませたからもう話しかけるべきではないと思った。きっと今話しかけたら言わなくていい言葉を言ってしまう。君を困らせてしまう。そんな別れ方をしたら二度と会えなくなるから。と見送る。
東京駅にてやまびこ55号盛岡行きが発車するときに、はぐちゃんが窓の外を人を探して走って行く。思わず呼びかける竹本。食パン一斤まるまるのサンドイッチには、はちみつと四つ葉のクローバーがめくる度にそれぞれ挟まっていた。「ありったけの幸せをあなたに」という気持を込めて。
うまくいかなかった恋にも意味はあると。
結局ハッピーエンドではなくて、主人公の竹本クンを始めとして好きな人と結ばれない登場人物も多くてちょっとほろ苦いけれど、いかにも青春、大学時代。
ただ山田さんは真山にまったく脈がないし、理花さんと仲良くなっていくのを目の前で見ていても諦めきれない自虐的なところが、切ないけど共感はできない。これは自分の気持ちに酔ってしまっているのかな。そして野宮さんの気持ちも弄ぶことになってしまってるし。
この2人は作者も気になるのか、「君は僕のたからもの」には野宮さんと山田さんのその後がでてくる。
野宮さんと半ばおつきあい状態になりながら真山のことも忘れられない山田さん。心の声が「全部カオにでちゃう」ので野宮に副音声付きで指摘される。そんな全部カオに出ちゃうトコが好きだと飲みながら山崎に惚気る野宮。真山はむかしのダメダメだったガキの頃のオレにそっくりで、苦労して脱いだのに、真山はその青くさいまま山田に愛されてるのだと気付いたときに「この娘だったらあの頃のまんまのオレでも受け入れてくれたのかなぁって」思ったという。
はぐちゃんがリハビリでつくった鳩が飾られている、アシスタントをやっている大学の部屋で野宮とゆったりする山田さん。はぐちゃんと先生は駅からちょっと遠いけれど古くて天井の高い一軒家に引っ越して、はぐちゃんは筆を手に固定した形で肩とひじから動かして大きな絵を描いていると。
山田にウチの田舎来ればという野宮。実家の裏がじーちゃんのやあだから斜面に登り窯とか作れるし、いい土が取れるみたいで陶芸家のヒトもポツポツ住んでいる。長野だけど中央自動車道使って3時間かからないから週末だけってのもいいし、はぐちゃんも花本先生も長野だから遊びに来てもらえていいと。実家に自分の部屋も残ってるけど、どうせなら建てちゃった方がいいか。君と僕の家を。という野宮に「ホンッとにカオに出るなぁ君は。一生あきないな」それはプロポーズですか。
「3月のライオン」14巻Chapter150-152秋の風景③-⑤に、その後のハチミツとクローバーのメンバーが特別出演。主人公の桐山零くんが通ってる駒橋高校の先生達が出場する第110回職業団体対抗将棋大会で、野宮さん、真山さん、花本先生ほかの藤原デザインのチームと対戦、藤原チームは負けたものの、ハチミツとクローバー女性陣のその後が語られる。野宮さんは山田さんを口説くために実家の斜面に登り窯をつくり、無事結婚して新婚さん。そこに 真山さんの彼女の理花さんがテントを張って住み込み女子友ができてウッキウキ、野宮さんが焼きの時間待ちのために山田さんのためにつくった小屋にははぐちゃんが転げ込み、山田さんも一緒に住み着いて新婚の夫の野宮さんのなかなか帰ってくれない、花本先生は「自然が多い場所だと精神が解放されて創作意欲が湧くのかなあ」と嬉しそう。懐かしの山崎さんは、相変わらず美和子さんにいじられて、古着屋でみつけたという中学生ジャージででてくる。
3月のライオンの後日談まで含めると山田さんと野宮さんは結婚したし、真山さんの理花さんとつきあっているようだし、はぐちゃんも創作できるようになったようだし、結局ハッピーエンド!
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