2021年7月30日金曜日

コレットは死ぬことにした118話を読んで思ったこと

ゼウス様からコレットを神様にスカウトする提案は、一応予想の一つにあったけど、今までハデス様といつまでも一緒にいられないことを時々思い知らされては寂しく思っていたコレットが、まさか「人として生きて死ぬ」ことを選ぶとは思ってなかったので、衝撃的で、このまま寂しさの漂う結末になるのかとショックを受けて、読まなければ良かった、コレットファンにならなければよかったと思わず思ってしまった。

少女からほど遠いおばさんの私が「花とゆめ」系の少女漫画が好きなのは、いろいろとシリアスな問題に遭遇しながら成長して、ハッピーエンドとなるファンタジーを楽しみたかったのに。コレットは、家族や知り合いや尊敬する人との死による永遠の別れ、真面目に勤勉に生きてきても理不尽に命が終わることもあること、愛する人との間に壁があること、ワークライフバランス、仕事で自分が必要とされている喜び、自分がいなくても仕事が支障なく回ることの大切さ、などなどこの歳だから身に染みて共鳴できるところも多々あって、かつラブラブのファンタジーで絵も綺麗なので、特に好きだったのだけど。

ともあれ展開に一番納得がいかないのが、途中コレットが気にしているのが、既に「覚悟したはず」ということしか描かれて無くて、いきなり最終ページの「人として生きて死ぬことにしました」になっているところ。今までは選択肢がなかったから、有限の命を一生懸命生きるということがベストにならざるを得なかったし、そこから自分が何をやりたいか考えざるをえなかったし、覚悟をせざると得なかったけど、神さまになって永遠の若さと命を手にいれていつまでもハデス様といるという選択肢が出来たときに、プラスとマイナスをもう一度評価しなくてはならないと思うのだけど、その過程がまったく見えない。ページが足りなかったのか次回以降に説明があるのかわからないけど、ハデス様のそばにいつでもいつまでもいられるわけじゃないと寂しく思っていたこととあまりにもかけ離れた結論で話に無理がありすぎる。よくコレットは死ぬことにしたはお仕事漫画と言われているのは、作者の意図したものかどうかわからないが、コレットもハデス様も恋だけでなく仕事が非常に大きな位置を占めているには違いなく、プロフェッショナルな態度がお互いに認め合ってひかれていくにあたって重要なのだからこそ、状況に応じてしっかり検討してもらいたい。

しかし最初に読んでから2日ほど経って、今回の118話の冒頭と最後から2ページ目にすごく違和感を感じたことを突然思い出した。118話は「この日のことを今でもよく覚えている」で始まって終わっている。ということはこれはコレットの回想なわけだけど、今までこういったモノローグはなかった。”今”って、コレットはいつどのような状況でこの日を回想しているのだろう。二つ可能性を考えてみた。

その1 まだ4話あるので、ハデス様や冥府の皆に説得されるか、ゼウス様に説得されるか、あるいは説得じゃなくてゼウス様の気まぐれで、それともいっそ弟想いのデメテル様が強引にコレットを神様にしてしまうとか。それとも知らずに?アスポデロスの柘榴ほか冥府の食べ物を食べてしまうとか。神話ではハデス様が説明せずに柘榴をペルセポネに食べさせてしまうけど(あるいは無理に)、それはこの漫画のハデス様とコレットの関係からあまりなさそう。

その2 それともこれは人として生きて死ぬときの回想で、死んでからラダマンテュス様たちのように第二の体をゼウス様からもらって(って幼女はやめて欲しい)冥府の妃ペルセポネとして神様としての生活が始まるとか。

その3 もう一つ、コレットではまったく触れられてないので可能性はなさそうだけど、神話ならハデス様は冥府から地上に人を連れ戻すことを許可する力をもっているはず。失敗して悲劇に終わったけど、オルフェウスに妻エウリュディケーを連れて帰ることを許したし、本来ディオニュソス様の母セメレはディオニュソス様によって冥府から助け出されて神テオネとなるはずだし。

前も書いたけど、気になっているのは、アスポデロスで育っている柘榴やデメテル様との再会や、「最後に見た空が お前の服の色 思わず見上げてしまった」というハデス様の思わせぶりな言葉が何を意味しているのか。ディオニュソス様はなんで山向こうに突然行く気になったのか、あれっきりお別れという風ではなかったけど、などまだ一波乱ありそう。それに保留になっているコレットのハデス様へのお願いはいつ?

いずれにせよ、寂しくないハッピーエンドに着地してくれないとコレットファンになったことを後悔しそう。

しかし愛する人は若く美しいまま変わらないのに自分だけが年老いておばあちゃんになっていくって、なんで好んで決意するかなあ・・・年とると知識も経験も積み重なって友達も増えるしいいこともあるけど、体の不調や体力がたりなくて、思うように仕事ができないこともあるし・・友達も家族も先に死んでいくし・・・、それとも17歳のコレットにはまだ実感がないかな。

あとハデス様は休暇をとって街に行って、それから11日寝込んでも支障がないように、働き方をずいぶん変えたけど、コレットもそろそろハデス様や冥府と、自分の仕事が両立するように、あと冥府だけじゃなくて地上も自分がいなくてもまわるように準備してワークライフバランスを考えてもいいのでは。ヘルメス様を見習って。

そんな遠くないうちにポーラは一人前になるし、自分がいなくてもまわっていくというのは寂しいけど、次の弟子はポーラたちにとってもらいたいといっていたわけだし、いずれ他の無医村へいってまた薬師を繋いでもいいのでは。