2021年3月29日月曜日

暁のヨナ34

(193話)緋龍王の血筋と聞いて喜んだ神官たちは、空都のはずれに賜ったヨンヒの一族の屋敷に行き話を聞くが、詮索に激怒したユホンは神官をほとんど処刑、神殿は焼き払った。ジュナム皇帝は激怒したが、民衆は神官が王家より力を持つのを快く思わず、ユホンを支持した。ヨンヒは神官見習いのイクスとカシの行方を女官に頼むが、ユホンは戦では敵を非情な拷問にかけたり女子どもを火あぶりにすることを厭わないから我が国は他国を圧し、民は平和なのだと諭す。

弾圧から一月後、ヨンヒは一族を訪ねる。そこで母が自分を責めて自殺した事を知る。大神官は自分たちの耐え忍んできた歴史や命の短さに同情してくれて救われた思いだったのに、生きながら火あぶりになった。ときいた。迎えに来たユホンは、ヨンヒが泣いているのを見て抱きしめる。

草凪みずほ作「黒檻姫と渇きの王」でも感じたのだけど、自分や国を守るために、過剰と思われるほど残酷で、同時に自分の家族や恋人を情熱的に愛することが一人のリーダーの中で折り合っているのが現代の普通に人の感覚では不思議だ。でも歴史上を見ても、戦で勝利をおさめたあと直接関係ない兵士で無い民衆や敵の家族まで残虐に殺すのはけっこう見られるから、たぶん疑問を感じてないのだろうけど。

ユホンとヨンヒの一人息子スウォンは明るく好奇心旺盛で聡い子どもだった。イルは、ユホンとの対立以来、同じ城に住んでいてもヨンヒやユホンとは疎遠になったが、突然顔に傷のある平民の女性を妻にしたという。なぜかジュナム王もすんなり承諾した。

緋龍城の庭園でヨンヒとスウォンは具合が悪くて東屋で休憩しているイルの妻と出会う。ヨンヒは見習い巫女だったカシであることに気がついたところへ、イルが素早く現れる。ヨンヒはカシが生きていることは誰にも言わないしすべては自分のせいなので、ユホンではなくて自分を恨んでくれと追いすがるが「もういい私は幸せだから。」とイルはカシを連れて立ち去る。

(194話)無事に赤い髪をした赤子、ヨナが生まれるが、半年たっても場内ではカシとヨナに近づけるものはごく一部。なのに、スウォンはいつの間にかカシとヨナの部屋に入り込んで、赤い髪がふわふわでとてもかわいかったのでそっとなでなでしたという。イルに連れてこられ、その子がカシとヨナに近づかないようにといわれる。その子は嫌な感じがするとも言われる。スウォンの心には「嫌な感じ」という言葉は刻み込まれたようで、ヨンヒがそんなことないという言葉は響いていないようだった。

後ほど35巻か36巻で、ヨンヒが日記に残した数々の言葉はヨナには大きく響いているのに、スウォンには届かないことも多いのが残念。

カシとヨナは少しずつ庭園にでてくるようになった。ある日火の部族のイグニとカシが庭園で話しているのを見かけたヨンヒは、そっと立ち去ろうとするが、スウォンが五部族会議に来たムンドク将軍に連れてこられたハクと遊んでいて、もう少し遊びたいという。そこにイグニとカシが挨拶に来る。ヨナの赤い髪を初めて見たヨンヒは緋龍王の存在を思い出してショックを受ける。スウォンはハクをヨナに引き合わせ、一緒に猫を見にいく。ヨナの手をひいて歩くハクを見て、カシははっとハクの腕を掴み、ヨナを守ってねと言う。

更に、カシはヨナが生まれたばかりの頃「この子にはしろとあおとみどりときいろの守護がついている」とイグニに言ったと、ヨンヒは聞く。イグニがスジンと帰った後、以前、ヨナが生まれる前にイルが幸せだと言ったことについて、「イル様が幸せだと仰ったのは赤い髪の子供を授かったからだと思います」とヨンヒに言う。カシには自分以外の人間の未来が見えるという。燃え盛る神殿の中からイルに助け出されたあの日イルと自分の間に赤い光りのようなものが降りてくるのを感じたという。それはまるで緋龍王。あの子が再び四龍を集結させることがわかっているという。
これってカシはすごい意地が悪いと思う。言っても何も出来ないし、ヨンヒにとっては、自分が血筋を保ってきたのに緋龍王は他に降臨して、ヨンヒもスウォンも苦しんで早死にするという運命しか継いでないと思い知らされて、絶望するだけなのに。イルもカシも言葉が適切でなかったり、説明不足だったり、口に出すと相手を傷つけるようなことをよくいう。そのしこりが子供達の代のトラブルを招いていると思う。
そしてヨンヒは緋の病に。スウォンにだけはこの痛みを負わせないでと神に祈るが「都合のいい時ばかりお祈りをして神は全て燃やしちゃったじゃないか」とヨンヒの頭の中に浮かんだイルがいう。その後2年間頭の痛みは消えたり現れたりを繰り返すがまだユホンも含めて周囲には悟られてない。そこにジュナム王が倒れたという知らせが来る。

(195話)ジュナム王の最後の厳命は、次期国王はイルだと。これはユホン自身にも、ユホンはジュナム王を凌ぐ王になると期待していた他部族にも衝撃的だったし、ヨンヒにとっても、自分を守るためにユホンは神官を断罪したからジュナム王は許さなかったのだと、辛かった。
庭園でスウォンと遊ぶヨナを見ながら、カシと話しているうちに頭痛でヨンヒは倒れる。いよいよユホンにも緋の病が発病したことを打ち明けざるを得なくなった。ユホンはヨンヒを静かな場所で養生させるために、スウォンを連れて城からでていく。別れの前にイルがお見舞いに来て、ヨンヒとイルは和解する。
戴冠式は盛り上がらなかったが、逆にユホンはイルは立派にやっているのにと腹を立てる。ムンドクだけが「イル陛下万歳」と叫んだという。ユホンはイルに味方が少ないから自分が支えてやらねばと思うようになり、「考えてみれば王になるかどうかなど大した問題ではなかった 王家と民を守ることこそ我が本懐 これからは弟を助け俺は前線で戦い続けようぞ」と決心をヨンヒに告げる。ユホンはカシにも戴冠式で初めて会う。女官が、カシ王妃がヨンヒにヨナ姫は緋龍王なのだと話していたこと、それがイル陛下が王に選ばれたことに関係しているのかとかとカシが尋ねていたことを告げ、またヨンヒがかつて神官見習いのカシとイクスを探して欲しいといったことも告げる。
子どもの頃のミンスや若き日のケイシュク登場!
ヨンヒにもミンスの母であり主治医である女性スイメイがそばに付くようになり、やっと心許せる人ができた。ヨンヒはカシ王妃を屋敷に招く。ヨナも来るというのでスウォンは喜ぶ。ミンスも一緒に遊ぼうと誘う。ケイシュクは断る。
しかしユホンの屋敷に向かう途中、カシは賊に襲われ殺される。カシが城の外に出るのは初めてだった。ヨナは馬車に乗っていなくて難を逃れる。

ヨナを慰めるためにスウォンは緋龍城にお泊まりしに行く。
これこそ、一巻1話の皇后陛下がなくなった後眠れないヨナに、スウォンが一緒に寝て眠るまで手を握っていてあげるという場面につながるのよね。その後1巻4話の雪合戦して3人とも風邪をひくのもその続き。見舞いに来たユホンがヨナは怖かったのは、ユホンはほんとうはヨナも殺すよう命じたわけだから、殺気が感じられたと思うので無理もない。
そしてその二ヶ月後ユホンは亡くなる。

(196話)ユホンは遠乗りに出かけて崖から滑落して亡くなったという。スウォンは一生懸命母を慰めようとする。夜中に起きたらスウォンがいなくなっているので探しに行ったヨンヒは、スウォンがケイシュクやユホンの護衛兵と話し合っているのを立ち聞きする。スウォンはユホンの墓を暴いて、背中に剣で刺された痕を確認したという。ユホンがイル国王と遠乗りに行くようすが気になってそっと後と追ったケイシュクの話では、イルは後ろからユホンを刺して、カシが巫女だったから殺したんだろうといったという。カシはヨナを緋龍王を生んだ偉大なる母で、ヨナは伝説の四龍と共にこの国を守って・・・それがユホンによれば「お前はあの女に騙されている」ということになる。イル王はユホンを突き飛ばして、崖の下に落とす。話を聞いたユホンの部下達はイルを玉座から引き摺り落として思い上がった考えを正さなければ息巻くが、スウォンはもう少し時間を下さいという。
母に聞かれたことを知ったスウォンはイル陛下が国を守れる人物かどうかを見極めないと、という。イル陛下が国を守れないと判断したら、降りて頂くか或いは(自分が殺すという含みがあるのかと思う)。イル陛下を殺したらヨナもただでは済まないのよ?というヨンヒに「ヨナは仲良しですが その箱を一番に掬い上げるのは私は違うと思います」

これで今までの謎がかなり解けた。この話はファンタジーではあるけれど、緋龍王の再来も神には国をまかせられないというのも、イル陛下が国を任せられるかどうかその後10年間見極めていたことといい、スウォンが本当に賢こい王になる素質があると思う。結局イル国王を殺して王になったわけだけど、歩み寄れないイルとユホンもに問題があると思うし、皆を納得できる説明が出来ないのならヨナが緋龍王とかいうのは、混乱させるだけだからイルは黙っていればいいものを。

(197話)手記も終わりに近づいた。ヨナの母はユホン伯父に殺されていた。だからイル国王はユホン伯父を殺した。カシは何かを感じて襲われた馬車には乗せなかったんだとヨナは思う。ヨンヒの病状は進み信頼する主治医スイメイに手記をイル国王に渡すよう頼む。最後はこれからイルとヨナに起こるかもしれない未来を私は何としても阻止したいと結ばれていた。屋敷にはユホンを慕っていた部下達が集まりつつあるという。
ジュドもいる!
その後ヨンヒはスウォンとイルの話をすることはない。
って、真国との和平を求めたときに、スウォンは会っても簡単に意見を変える方ではないとミンスもいっていたけど(24巻136話)、母の気持ちも無視かい!
自分がもっと働きかけていたら大神官のこともその他の悲劇も起こらなかったかもしれない。この死の連鎖を断ちたいというのがヨンヒの願いだった。
手記にはイル国王のヨンヒへの返信が出されないまま栞の中に隠されていた。自分と兄は幼少期から性格も思想もまるで違っていて、自分は兄上のように民に愛されていなかった。緋龍王の血筋というヨンヒが現れて兄への妬みが一気に吹き出したけれどヨンヒのせいではない。兄が自分を気に懸けていたことはわかっていたけど、昔から兄と話をするのが苦手で体が震え言葉に詰まり本当に言うべき事と違うことを口走ってしまう。あの時理解して欲しかったのはカシを愛していたこと。兄がヨンヒを何より大切にしていたように、カシは自分にも代えがたい存在だった。私を騙してなどいないと信じて欲しかった。でもカシにも自分が愛していたとは伝わっていなかったことがわかった。人どころか自分ですら動かすことが出来ない自分は王に向いていない。カシも予言していたように、私はスウォンに殺される。もう二度と誰かを殺したくないから、その日が来たら受け入れる。自分が王になりたいと願ったことは無かったが、(神官の件で)兄上だけは王にしてはならないと決意した。自分は、次の王が立つまで、ヨナがいずれ四龍を集結させるまでのつなぎだ。自分が死んでヨナを切り捨てるとわかっていてスウォンを受け入れることは出来ない。いつかヨナがひとりぼっちになってもヨナを誰より大切に想ってくれる者 何があっても裏切らない者を側に置きたい。

それは当然この人

(198話 2020/11/5花とゆめ22号 2020/10/20発売)図書室で再びユンに会ったミンスは、ユンに千樹草について教えて欲しいという。「自分が千樹草がある所に行ってお願いすれば分けてもらえるかも ただ自分はヨナと一緒に城に入った者だから外出の許可でるかなあ・・」といわれてユンがヨナの仲間であることを初めて知る。ケイシュクに交渉にいく途中に、緋の病の頭痛でうずくまるスウォンを囲む四龍に気がつく。精神力で持ち直したスウォンとそれを追うミンス。四龍達は見張られていることに気がつく。「王の病状は国の最重要秘事 加えてひた隠しにされてる「緋の病」だ それを知った時点で普通の人間なら死罪だ」とゼノが言う。ヨナが四龍やハクに会わないって言い出したのはそのためだったのかと四龍達は気がつく。

まだ執務室にいるヨナに、ミンスは急な仕事が入ったので今日はお部屋に戻るようにとの伝言が来る。伝えたのはユホンの護衛だった人ね(196話197話)。ヨナがスウォンをスウォンと呼ぶのが気に入らないようで陛下とお呼び下さいと言うが、口先だけの忠誠に意味は無いでしょうと扉を締める。3日後もまだ執務室でヨナは本を読みまくっていた。スウォンに話したいことがあると言うが、今日は南戒からの使者が来るのでスウォンはここに戻らないとミンスはいう。そこにジュドがミンスを呼び出しにくる。ジュドの反対を押し切って自分も行くという。スウォンの容態は南戒の使者に隠しきれないくらい悪かった。それでもケイシュクが勧める睡眠薬を断って立ち上がったところでヨナと顔を会わせる。「王が病にかかっていると最も知られてはならない相手でしょう ヨンヒ様はずっと寝たきりだったけどあなたは働きすぎなのよ 王家の人間ならここにもいる」
ということで会談にはケイシュク、ジュドを伴ってヨナが出た。舐められていると相手にしなかった南戒の使者だが、スウォンを呼び捨てにするヨナに、高華国でかなりの地位にいるのかと思う。ケイシュクは渋い顔。
ヨナは金州での南戒の敗残兵の乱暴狼藉、阿波での人身売買、水の部族の民をナダイを使い廃人にしたことを指摘する。身に覚えが亡いとつっぱねる使節団に、高華国にやってきた船は沈めたし、人身売買もナダイもやめさせて、関わった商人や貴族は高華国で捕らえていると伝える。
さすが今まで各部族をまわって世直しに努めてきた甲斐があったヨナの迫力とユーモアはかっこいい。

1巻からの伏線がかなり解決されて、親世代のどろどろした確執が重い。

争いを厭う平和主義者と行っても、代わりに外交手腕をもっているわけではなく、苦しんでいる国民に手を伸ばすわけではないイル国王に、ヨナの父とはいいながら疑問を抱いていたのだけど、この巻で国王としての才は全くないけれど、理解できたし共感できた。ただ、イル国王の心理は、理解できない人には全く理解できないだろうなあ。才能豊かで高圧的で外交的な兄弟に常に押さえつけられてきて、思うように喋ることも出来なかった私にはわかるし、殺すくらいの殺意を持つのも私にはよくわかるけれど。

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