(1話)コレットはまだ17才だけど薬師(お医者さん)として独り立ちして数年。村の唯一の薬師として朝から晩までひっきりなしに呼ばれ、すべてに忠実に答えようとして、眠る間も食事をする間もゆっくりトイレをする間もなく疲れ果て、井戸は別の世界につながっているという伝説を思い出して、衝動的に飛び込んでしまう。気がついたのはハデス様が治める冥府の牢屋の中。様子を見に来た家来のガイコツを恐れるどころか、死者の国なら病人はいないから働かなくていいと喜ぶ。ところがガイコツたちは、ハデス様がしばらく前から謎の病に伏しているから診察をしろという。いやいや連れて行かれた閨ではハデス様は発疹だらけの手を突き出して、「これを直せるのか」と頭ごなしで、何が起こったのか聞いても会話が噛み合わない。イラッとしたコレットは閨のカーテンを開ける。無礼者と怒られても「治す気があるならとっとと中に入れなさいよ」と、ハデス様の体に懸けている布を剥いでチェックをする。ハデス様は発疹の理由は頑なにいわないものの、ガイコツ達を制して治療させる。コレットは炎症を抑えて解熱する(下熱じゃ無いと思うが)処置をはじめる。1日半眠ったハデス様が目を覚ましたときは、それまで治療をしていたコレットが疲れ果てて、ハデス様のベッドで寝てしまったところだった。客間に運ばれて目が覚めたら再び治療に連れて行かれるコレット。なんだかんだいってハデス様が運んでくれるのね。素直に治療のお礼は言わないけど。ハデス様は特別牢の悪霊が騒ぐのでケルベロスを連れて静めに行く。戻ってきたハデス様はまた熱がぶり返しているのを家来に隠そうとする。「お前はたいへん無礼だが なんだかんだ病んでいる者を放っておけぬ質らしい」(既に仕事人としてのコレットを認めているハデス様)と、少し前に脱走した霊をおって地上近くまで追いかけたが、長い間地下に暮らしている自分が日光アレルギーの体質になったことをやっと語る。薬師は患者のことを口外したりしませんよとコレット。(ちゃんと守秘義務という概念があるらしい)家来の前で弱音を吐いたら家来が不安になるなど立場があるから言えないことがあるというハデス様に、コレットは自分を重ねる。頑張ることが嫌になりませんか、と自分と比べて思わず口にするコレット。(ハデス様は恋人になる前からよくコレットの髪や頬に触るけど、ここで既にコレットの頬に手をあてている)連れて行かれたのは、ハデス様が善と下した魂達が過ごすアスポデロスの野という天国。「ここを守る そのためならあらゆる痛みも孤独も耐えてみせる」とハデス様。ここで暮らす死者の影たちの一人がコレットに歩み寄って、「生前あなたに病を治してもらったことがある あのときはどうもありがとうございます」と言いに来た。そういえばお礼の言葉もたくさん聞いていたことをコレットは思い出す。そこへ、地上は流行病で、冥府に死者がたくさん押し寄せているとガイコツ家来が知らせに来る。今行ったらお前も死ぬかもしれないというハデス様に、私は薬師、今行かずにいついきますかと迷いの吹っ切れたコレットは言う。送ってくれたハデス様は「死後裁判でこの冥王に対して胸を張れる人生を全うしろ」と。
地上の流行病治療が一段落したところでコレットは再び井戸に飛び込み、ハデス様の治療を続ける。
読み切りだったという第1話でさえこのタイトルはあまり合ってないと思う。ましてやその後の連載はタイトルから受ける印象と中身は全く異なるので、ずいぶん損をしていると思う。あと下熱とか多少の縁とか(輪廻転生の考え方は入っているので、”多生の縁”のしゃれかとも思ったのだけど、この場合文脈に会わないし)のように間違いや表現の仕方がおかしいところがこの後も時々見られ、つい気になってしまうのが、大好きな漫画だけに残念。漫画に校正者はいないのだろうか。
(2話)あいかわらず仕事の為には自分の体を顧みないハデス様は微熱もあるし太陽アレルギーによる発疹も治ってない。コレットには弟子が二人出来たけど、手間がかかるばかりでつい自分で全部やってしまってあいかわらず忙しい。「なら毎日自分の往診にこなくてもいい。神は不老不死、だがお前は違う。自分の仕事をよく考えろ」とハデス様。まあ仕事人間なのはどちらも同じだけど、確かに神は死なないから、ハデス様の言うのももっともかな。それに他人のことはのよね。
行き倒れの旅人ヘラクレスがコレットの診療所にやってくる。うなされていて、治ったように見えないが、まだやることがあると翌日旅立つ。疲れたあまり薬箱を忘れて冥府に往診にいって、ハデス様を待っている間にハデス様の閨で寝込んでしまうという醜態をさらした上、笑って誤魔化そうとして、「お前に命は預けられない 帰れ お前はいらぬ」とハデス様に追い返される。このころのコレットはちょっときつい目をしている。このころのハデス様もちょっと言葉がきつい。まあハデス様もコレットと付き合っていくうちに少しずつ変わっていったところがこの漫画の魅力だけど、しかし不老不死の神様がお前に命は預けられないはおかしな表現だ。命預けてないじゃん、どうせ死なないくせに。家に帰ったコレットは、放心状態で、捻挫した患者さんに包帯を巻こうとして体が動かない。かわりに颯爽と弟子達が巻いてくれるのを見て「自分でやった方がなんてとんだ思い上がりだ」と思う。真面目な仕事人間は自分がすべてやらねばという思考に陥りがちなのだけど、ハデス様だってそれは同じ・・・だけどまあ神様だからいいのか。翌日コレットは冥府でハデス様に謝って治療を続けることになる。
(3話)ケルベロスは三つ首の猛犬だが、お腹がすくと三匹の子犬になる。ハデス様の治療中、半身半神のヘラクレスが冥府に入ってきて、子犬のケルベロスを連れて行こうとする。ハデスに攻撃されてケルベロスは取り替えされるが、かわりにヘラクレスはコレットを人質にしケルベロスと交換だと交渉するが、ハデス様は断る。ヘラクレスはコレットをハデス様の愛人だと思い、コレットを見殺しにして死後裁判などできないとふんで、地上へつれていく。ハデス様に攻撃されて怪我しているヘラクレスを、薬師の制服である自分のスカートを使って包帯をつくり手当てするコレット。ヘラクレスが妻と子供を守ってやれなくて、夢の中で繰り返し妻と子供が死ぬ夢を見るという。苦しくて予言の神にお告げをもらいにいったら「故郷の王の下で働け」と言われたという。故郷の王は珍しいものが好きであれこれかなえてあげて、ケルベロスを連れていくのが最後の仕事で、これで神様が夢を消してくれるという。大事な人をなくして傷ついたのに人の大事なものを奪うのか、大事なものを守れなかった罪悪感は神様に消してもらうものじゃないよ、自分で折り合いをつけなきゃとコレットは説得する。コレットは子どもの頃流行病で村が全滅して両親も友達も村の全ての人を失ったけれど、コレットを育ててくれた薬師の先生は「楽しそうに歩いているどの人もみんな心の中には楽しいこと半分苦しいこと半分を持っているんだけど、それでも明日が楽しくなるように歩いているのさ 楽しい日々が傷を包んでいつかいつか溶けたらいいなと」そうやって死ぬまで自分とつきあっていくんだとコレットは語りかける。楽しそうにしている人たちに悩みがないなんて思い上がり。
(4話)地面が割れて、ケルベロスの偽物を連れてハデス様が現れる。地面が割れてハデス様登場というのは、ほんもののギリシア神話でもペルセポネの略奪であるけれど、この漫画の中では、このあと他では見ない。ハデス様が都に乗りこ自分の力を全て使うと、都一つなど簡単に沈むという。自分のせいでまた人が死ぬのは勘弁してくれとヘラクレス。ハデス様は2,3日は持つ偽物のケルベロスで立ち回って見せろと、ヘラクレスに言う。コレットがハデス様と冥府に戻ると、ガイコツが「予言だの占いだのは心が弱っとるときに手を出すもんではない」とコレットに語る。「無事で良かった」「ハデス様はお前を放り出しはしたが それをなんとも思わんよようなお方ではない」とも。わかってはいるけどケルベロスとの交換をきっぱり断っていったん見捨てられた形になるのが、自分は冥府の仲間じゃないというのを思い知らされたようで落ち込むコレット。ヘラクレスの手当てに破ってしまったスカートのかわりに薬師の服用に青い布を冥府からもらったものの、人間には分相応で後光が差すので山向こうの町まで買いに行くというコレットに、遠いから冥府から井戸を経由していけというハデス様。ハデス様を井戸の側に置いて、薬師の服を買いに行ったときに、ヘラクレスが上手く王様を諫めた噂を聞く。おばあさんがハデス様の姿を遠くから見て、あの人は若い頃に見たというのを聞いて、ハデス様に聞いてみると、太陽アレルギーになるずっと前には、死者の裁判官として人を知るために時々人混みに紛れて歩いたという。コレットを待っている間にも3人神様を見かけたという。
今ならハデス様は絶対にコレットを守ったと思うけど、だいぶ違うなあ。まあ二人とも好きだと意識する以前の頃だからしょうがないけど。あとハデス様の神様らしいスーパーパワーってその後はあまり出てこないし、ガイコツもちょっとキャラが違うし、いろいろな設定がその後とずいぶん違う。あとコレットの買い物につきあうハデス様、凄く忙しい設定じゃなかったっけ、まあこの時点ではコレットに負い目を感じているということがあるか。
突風が来てハデス様のフードが外れて、太陽アレルギーのハデス様に日が当たりそうになって、必死で抑えるコレット、「楽しいこともすべきです 私がそばにいてそれができるならどこへでもついて行きます」というコレットを抱きしめて、「天秤にはもうかけぬ お前は冥府の薬師 私の薬師 誰が来ようと渡すものか」
この辺まではいつ話が終わっても不思議はなくて、今の連載とは雰囲気がちょっと違う。
暁のヨナのような現在人気の長寿漫画も、最初は連載いつ打ち切られるかわからないようで、なかなか大変だなあと思う。「コレットは死ぬことにした」は逆に読み切りから長寿連載になったようなので、悪霊が文句をいう声が住居まで聞こえてくるような最初の冥府の雰囲気とちょっと変わっているけど、ほかはけっこう矛盾なく展開できていると思う。
ギリシア神話をベースに借りているとのこと。かつてこども向きのギリシア神話を読んだ感じでは、人間の身勝手さを膨張させて詰め込んだようで、ゼウスからしてあちこち愛人をつくってこどもを産ませて、その愛人や隠し子がヘラに殺されたり呪われたりするのは放置して、まったく共感できなかったのだけど、よく少女漫画向けに改変したと感心する。
神様は不老不死だけど、病気にはなるという設定もギリシア神話ならまあ納得できる。愛人つくり放題のギリシア神話の神様の中でハデス様は、浮気相手はメンテーくらいしかいないし、妃のペルセポネはさらってきたけどなかなか手を出さずに丁寧に扱ってウブなところがあるし、一番共感できるキャラかも。
全体にふわふわとして、いろいろあるけどたぶんハッピーエンドに着地できるだろうと安心して読めるファンタジー。ペルセポネは妃になってからも地上と冥界を行き来していたはずだし、どう着地するかはまだわからないけど、冥府ではザクロが育っているし、デメテル様ともいつか再開するだろうし、18巻+αまで進んだけど、今後が楽しみ。
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