2022年2月1日火曜日

スキップ・ビート!10

2005年6月17日発売

(ACT.55 月籠り)かつて大ヒットした『月籠り』のリメイク版『ダークムーン』の制作発表のテレビ宣伝で、なぜか緊張しまくってる緒方監督。なぜか蓮も緊張している。

インタビューがいざはじまると、緒方監督は冷静に受け答えしているので、キョーコも、テレビで生中継を見ていた緒方監督の親友の麻生春樹さんもホッとするが、最後の質問「前回『月籠り』の監督をなさってた伊達大尊監督はお父様だそうですね。緒方監督は以前までお父様と同じ様に本名伊達啓文で活躍なさってたと聞いたのですが 何故今回を期に緒方啓文と改名されたんですか」と言われた途端、呼吸困難で倒れてしまう。
 
病院に運ばれた緒方監督には、新人で次の仕事が何もないキョーコが付き添った。麻生さんも駆けつけて退院などの手続きをする。キョーコは「来ないと今日教えてもらった京子ちゃんの携帯番、尚に横流ししちゃうから」と麻生に脅迫され、3人で一緒に食事。その後、キョーコは、病院で麻生さんに聞いた話や、3人で食事をしながら話したことを蓮に電話で報告する。緒方監督はずっとまわりに、父親のおかげでうまくやって来たって評価されてきたから、父親の存在がひどくコンプレックスになっているという麻生さんの言葉を思い出して無言でいるうちに、留守電が時間切れになる。

(ACT.56 資格を持つ者)現場に復活した緒方監督、制作発表で倒れたのが嘘のように元気そうだが、蓮はキョーコちゃんから電話で「パニック障害みたいなものらしいです。監督きっと、今ギリギリの力で自分を支えてるんだと思うんです。大き過ぎるお父さんの名前と実績の重みから」と聞いたことが心に残っている。高校生役のエキストラの子達が「緒方監督は伊達大尊監督の息子だから、伊達マジックで今回のドラマも大ヒット間違いなし」と大声で噂しているのを聞いて、3時間かかった傷跡特殊未緒メイクのキョーコが「こんど一度でもその話題にふれたら呪うから」と怨キョを出しながらいうと、キョーコの迫力に皆逃げていく。唖然とする社さんと敦賀さん。
「未緒の雰囲気もうつかんじゃってるんだね」と社さんに言われて、演技してなかったキョーコは落ち込む。子どもの頃のキョーコを知っている蓮は「こんな子じゃなかったのに何でこんなに変わり果てて」とケンカを売ってきた尚を思い浮かべる。

役作りで悩んでいるキョーコ。養成所の役作りの授業は『やっぱきまぐれロック』の収録と重なって思うようにでられてない。そんなキョーコに「昨日の三度目の電話ってそのためだった?」と蓮。電話での緒方監督の話に、蓮の反応が深刻だったので言いだせなかったのだと気が付く。「役作りは台本に描かれていない登場人物のバックグラウンドや心理を考えてやることを言うんだよ」と蓮に言われて、「芝居は台本に描かれてる事だけ忠実に表現すればいいの!登場人物のバックグラウンドなんてよけーな事考えなくていいのよ!」といったモー子さんと比べて混乱する。二人がプライベートで電話し合う仲と、初めて知って、浮かれる社さん。トイレに行ってくるからと気を利かせる。

まだキュララのCMしか知られてないキョーコが、敦賀さんと二人っきりで話しているのを見て、先ほど脅かされた高校生役のエキストラたちは陰口をたたく。

20年前の未緒を演じた飯塚さんは、今回は未緒の母親役だが、プロフィールの一番先に未緒が紹介されるほど未緒は自分の代名詞だ、とプライドが高く、キョーコのことを『今時の新人タレント』と監督に不満をぶつけ、更に緒方監督が制作発表で倒れたことを「あなたみたいな頼りない監督だけにまかせておいたら『月籠り』が壊されてしまう!!」と。

演技中に蓮のいったことを反芻していて、思わずヘマをしてしまったキョーコに切れた飯塚さんは、「未緒の役作りできてるんでしょうね」と詰問する。「もちろんです」と反射的に答えてしまうと、「本当に未緒を理解してるかどうかテストをしてあげる。一つでもわからない事があったら、あなた未緒を降りてもらうわよ」と。なだめようとした緒方監督に「伊達監督は、当日役作りのできてない役者なんて容赦無く切り捨てましたわよ。伊達監督を見習った方が宜しいんじゃございません」と地雷を踏む。

黒髪ストレートのキョーコちゃん、女子高生らしくて似合う。後にカリスマ高校生「ナツ」をやるけど高校生の内に、清楚な高校生の役もいいな。オカルト映画もできそうだけど。
飯塚さん、演技に対して厳しい姿勢はいいのだけど、キョーコちゃんだけに求めるのは、自分のプライドが入りすぎてる。

(ACT.57 心の印)飯塚さんのテストが始まろうとしたところで、飯塚さんの言葉を反芻していた緒方監督が、呼吸困難で倒れる。伊達監督を起こした蓮は、伊達監督に何かをささやくと、嘘のように呼吸困難が収まる。

何事も無かったように飯塚さんの質問攻めが始まる。

未緒は内気で引っ込み思案で、母親がなにかにつけ才色兼備な姉の操と比べるのがコンプレックスとなって、姉の操も母親も憎んでいる。唯一未緒はバイオリンの才能が姉より秀でていたが、嫉妬した姉は山の別荘に行ったときに、切り立った斜面下に投棄されていたガラスの山の中に突き落とす。未緒の顔には傷が残る。父は姉を未緒と比較したりはしないが、父が自分の欲望のために実の弟夫婦を殺しのを知っているので、憎んでいる。一人生き残ったその6歳の娘の美月は、未緒の両親にひきとられたが、二人とも内心美月を疎んでいる。嘉月は未緒の嫌いな姉の操の婚約者なので、やはり未緒は憎んでいる。

未緒が、美月を子どもの頃から嫌っている理由を聞かれて・・・そこまでは考えていなかったキョーコは言葉に詰まる。だったら始めに言ったとおりあなた未緒を降りてちょうだいと飯塚さん。
まあ考えていなければならないけどね。
敦賀さんの「この子に少し時間をあげて下さい。この子は必ずあなたが満足する未緒を見つけてきますから、俺が保証します」というとりなしで保留になったものの、敦賀さんは答えは教えてくれなかったので、社さん相手に愚痴るキョーコ「これは蓮の愛のムチなんだ!!キョーコちゃん蓮に愛されてるんだよ」という社の言葉もスルー。

心の拠り所が無いのは未緒と変わりないのに、美月は、未緒みたいに暗くもならず前向きで元気で明るくて心優しい素敵な娘さんで、私の理想のお嬢様、それに比べて未緒は・・・と思うが、内気で引っ込み思案の人が自分のそういったストレスを時には面と向かって堂々と美月や嘉月にぶつけたりできるものだろうかとも思う・・・と水面に映る自分の特殊メイクの傷を見てはっとするキョーコ。社さんはキョーコの一人七変化に見とれている。

この、自分の世界に入りこんで周りが見えないキョーコちゃん楽しい。社さん後に(40巻ACT.240)紅葉のオーディション前にキョーコちゃんのマネージャーを希望して兼任するのも、この何が起こるかわからないけど、覚醒したらすごい俳優になるキョーコちゃんができあがっていくところに惹かれたのでは。もちろんあれは森住仁子が気になったというのもあるだろうけど。

一方ダークムーンの制作発表をテレビで見た祥子さんは、京子が敦賀さんと共演することを知って、尚が、大嫌いな敦賀蓮と『自分のモノ』といってはばからないキョーコちゃんの組み合わせを知るのは気分悪いのじゃ・・・と焦る。次の尚の仕事はDARK MOONを制作している富士TV。

(ACT.58 不測の風)そして突然荷物を持って「すみません!すぐもどりますから」といって潜在能力を出し切って社さんを振り切って外に出て行ったキョーコに焦る社さん。
でた!ファンもおいつけない、パワー全開で蓮を後ろに乗せた自転車を漕ぎ(7巻ACT36)、後にルトさんも(31巻ACT.187)蓮も(44巻ACT.271/45巻ACT.277)振り切られる潜在能力の70%を出したキョーコ!しかしなんで70%なんだろう。
非難の声が巻き上がる現場に、一人冷静に「必ず返って来ますよ。あの子は決して自分の仕事を途中で投げ出す様な子じゃありませんから」その確信の目に緒方監督も「僕は京子さんを信じます」と飯塚さんを説得する。
まあ代マネでのキョーコちゃんを知ってる蓮からすればそうだけど、いきなりすごいキョーコちゃんへの信頼。もっとも役者としては短期間にブレスも息継ぎも完璧になったし、蓮の台本読みの相手もできるようになったし、役者としての素質を認めてるのね。

全員に反対されるだろうから何も言わずに飛び出してきたけど、未緒が本当はどういう人なのか見えて、その未緒が演ってみたくてドキドキするキョーコ。

3時間後戻ってきたキョーコは、傷跡を隠すはずの髪の毛をばっさり切ってショートカットにして、黙って台本を見ながら座っていた。呆然として口々に皆非難する中、蓮の声にも反応しないキョーコ、「顔を上げて」と手を出した蓮を憎悪のこもった刺すような目で睨み台本で叩く。

ストーリーが『原作と違う』というのはあまり好きじゃ無いけど、人物像の表現の仕方として解釈は色々あって言い。少なくても20年前の真似は、『月籠り』を追い抜くためにはダメだよね。そういう意味では画期的。この時の蓮をも本気で睨むキョーコちゃんかっこいい。これ、別の映画かドラマで再現してもらいたい。真剣に闘う蓮とキョーコちゃん。

「未緒がついてます」という蓮。飯塚さんに「試しに話しかけてみて下さい。あなたも嫌われてるはずだから、きっと冷たくあしらわれますよ」「未緒の顔の傷を隠すための長い髪は内気で引っ込み思案の未緒の象徴なのにそれを取り払ってしまうなんて、京子さんの未緒は既成の未緒を根底から覆している」「世界を破壊と混乱に巻き込む竜巻だ」と目が離せない緒方監督。

社さんもうすぐ誕生日なの?囲碁将棋が趣味?

(ACT.59 世界が壊れた日)未緒の憑いたキョーコの、演技テストに不満そうな飯塚さん。まわりの意見も「あの未緒じゃだめだろ。あれじゃ『内気で引っ込み思案』って未緒らしさが全然感じられないし」蓮は緒方監督に「監督のおっしゃるとおり俺も正直あの未緒は原作の未緒としてはどうかと思いますよ。でも『役作り』も初めての彼女が、一人で一生懸命考えて出した答えがあの未緒なんです。もし彼女の役者としての自信を育てる協力をしてもいいと少しでも監督が思って下さるなら、もう少し彼女の『未緒』を見てやった上でダメ出しをしてやってくれませんか」と。「もしかして敦賀君にとって京子さんは特別・・・?ひょっとして敦賀君、京子さんの事を」ドキドキする緒方監督。緒方監督なかなか鋭いって全くの新人の京子にここまで肩入れしたら当然か。「でも僕には京子さんのあの未緒は使えない。どんなに京子さんの未緒を見せてもらっても」

母親(飯塚さん)の呼びかけを無視して、歩み去ろうとする未緒。再度呼ばれて振り返った時の憎悪の顔に、皆衝撃を受ける。ニッと笑う蓮。まるで気位の高い金持ちのお嬢様だという声。「お姉様のお名前(操)をもじったりせず、私にはもっと違うお名前をつけて下されば良かったのに。そうすれば一文字抜けたらずいぶん出来が違うんだな、なんて笑われ方をする事は一度もなかったはずなのに」カチンとくる飯塚さんは、完全に未緒の演技にひっぱられている。

なんとかキョーコの未緒を引き摺り落とそうとする飯塚さん。

劣等感はプライドがあるから感じるんじゃないのかと、自問しながら必死で否定する緒方監督。

「はっきりおっしゃっても構わないのよ。この傷が本郷の娘には相応しくないって」未緒の母親の性格ならこの状況ではきっとそう思うはずと気が付く飯塚さん。ならば日本有数のお金持ちがなぜ娘の傷跡をそのままにしておくのか。「自分の醜い心が見えるんでしょうね この傷を見る度にお姉様の美しいお顔がね、醜く歪むの まるで苦痛にでも耐えるようにとふっと笑う。つまり未緒自身が傷跡を隠すことを望んでないからだという。「よし いい答えだ」と心で思う蓮。衝撃を受けた緒方監督は目まいと動悸と身体の震えが止まらない。「彼女の未緒は激しすぎる。彼女の未緒は使えない。始めは思ってました。」蓮を始め全員驚く。「演技を見始めてからは、必死で自分に言い聞かせたんです。あの子の未緒は原作と違いすぎる。使えないんだって。なのにそうやって必死で抵抗してるのに、あの子は、あの子の未緒を僕に否定させなくしてしまうんです。最後の彼女(下線部)を見た瞬間、体中の血液が沸騰する感じ。それから作品を撮りたくてこんなに胸が疼く感じも。あそこに居るのはもう20年前の未緒じゃない。生まれ変わった未緒なんだ。だったら僕が次は彼女が生きていける新しい『世界』をちゃんと作ってあげないと。『月籠り』に囚われない20年前とは違う新しい『月籠り』の世界『DARK MOON』を。

たしかにかつての大ヒット作のリメイクって、すべての役を考え直して新しい解釈が出来ないか検討しないと、単なるものまねで終わってしまう。前作の監督の息子である緒方監督もそしてここでは語られてないけど前作の主演の息子である蓮も。

(ACT.60 それぞれの「影」)カチンコが鳴ってやっと未緒が抜けたキョーコ。土下座して謝る。「京子さんのその思い切った未緒のおかげで僕は自分がどういう『DARK MOON』を撮りたいのかはっきりわかったんです。僕は京子さんの未緒と仕事がしたい。」と緒方監督。

原作の未緒に似ても似つかない未緒を使おうなんて憤怒の飯塚さんに「未緒としての一番重要な部分は変わってないんですよ。それは未緒を演じた事のあるあなたが一番よくわかるはずです」と。それは憎悪。

別人のように自信をもった緒方監督。「『月籠り』を超えるためには『月籠り』を飲み込んでしまう程のインパクトが必要なんです。未緒だけじゃない。出演者全員に言える事」と。言葉は低姿勢なのにNOと言わせない威圧感があった。

「監督は大きすぎる父親の影から飛び出せるきっかけを掴んだんです」と社さんに説明する蓮。蓮の頭には、社長の言葉「そんなお前に表現できるのか?彼女の事が愛しくて愛しくて、それでもそれを必死で自分の中で押し殺す男の気持ちが」が頭に響く。

飯塚さんの未緒も興味あるけどね。

そこに蓮に怒られることを予想したキョーコがあらわれる。「怒ってたよ。君が無断でいなくなった事に関してはね。」「もし型通りのありきたりでつまらない未緒でも作って来ようものなら2・3年分の涙が枯れ果てるまで泣かしてやろうと思うくらいには」と「だったけど君は俺の予想以上の未緒を作ってきたからね」呆然と見守る社さんと緒方監督。「文句無いよ」とふわっと笑う敦賀さん。「君の未緒は嘉月の天敵としては理想的なんだ・・お互い役に入ったら本気で闘おう」といわれて敦賀さんと握手するキョーコ。

富士TVは、敦賀蓮の大写しのDARK MOONのポスターばかりで気分が悪いので着替えも省略して早々に帰ろうとする尚に、スタッフがDARK MOONのポスターを見ながら「あの子惜しい事したよねェ、尚君のプロモの発表がもうちょっと早ければ、あの子絶対今より扱い良かったはずなのに。役はいいはずなんだけど、CMが話題になってもまだ名前が売れてないから、報道番組とかでも、特別取り上げてもらえなくてさ、せめて制作発表でくらいいじってあげてもって思ったよ。主演の敦賀蓮と同じ事務所なんだか・・・」あわててスタッフを止める祥子さん。はっとしてポスターをじっくり眺めて京子の名前を見つける尚。


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