2021年12月26日日曜日

スキップ・ビート!1

2002年7月19日発売

(ACT.1 そして箱は開けられた)中学出てすぐ上京し、高校にも行かずにバイトを掛け持ちするキョーコ。おしゃれもせず毎日髪を振り乱して必死なのは、幼なじみの尚との東京のマンションでの生活を金銭的にも生活面でも一人で支えているから。尚は、家庭の事情でキョーコが預けられて育った京都の日本有数の老舗旅館の一人息子で、キョーコがひたすら夢中な同い年の男。旅館を継がせたい親とは勘当同然で上京する際に、キョーコに一緒に来てくれないかともちかけ、キョーコはひたすら尽くしている。しかし、尚はデビュー曲でヒットチャート一位になって一躍成功した途端に、二人で暮らすマンションにはあまり帰らなくなって、態度も冷たい。にもかかわらずキョーコはいまだに尚一筋。セカンドシングルのCD特典ポスターを手に入れるために走り回る。

生番組に出ている尚に、デリバリーサービスと偽って差し入れを届けに行くと、超グラマーなマネージャー祥子さんに、キョーコのことを「うちの旅館はよく手伝ってきたし俺の言うことには絶対刃向かわないし、子供の頃から家政婦だと思っていたし、自分は強制してない、あいつが自分で勝手についてきたんだからあいつが俺のために身を粉にして働くのあたり前 俺祥子さんみたいなのがタイプだも~ん」「あんな化粧ひとつしない色気ねー女」」と言い放ったのを目の前で聞いて、突如切れるキョーコだが、警備員にあっさりつまみ出される。「俺はこの先ガンガンスターダムに伸し上がって行くんだぜ ただのしがない一般人のお前になんか 到底 手の届かねぇ存在になる一方だ 俺に「復讐」とやらがしたいなら 芸能業界に入るんだな ま やるだけ無駄ってやつだけど」と。

復讐を決意したキョーコは大枚3万円を払ってショートカット茶髪にする。

最初の頃の尚、ほんとうに自分勝手でいやな男。明らかにだんだんとげとげしくなって、邪魔扱いされているのに、なんでキョーコちゃん、ひたすら尽くし続けるんだろう・・・とは思いつつ、後ほどでてくるように実の母には愛されず、育てられた京都の旅館も尚と一緒に飛びだしたので帰れず、自分で回想しているように、尚一筋だったので、何をやりたいかなど考えたこともない空っぽな自分で、すがりつくしかない状況ではある。そうなったのは半分以上尚の責任ではあるけど。というか、自分に惚れていて、ついてくるのは知っていながら、「ついてきてくれないか?」と疑問形でいったから、自分が頼んだわけじゃないなんて、男の風上にも置けない卑怯な奴。キョーコちゃんが後々まで思い出しただけで憎しみに駈られて我を忘れるのも無理ないと思う。

あと、ここで抱かれたい男2位に本当に古賀さんが入っているのを改めて確認。42巻でこの人が紅葉のオーディションの立会人、そして後にキョーコの共演者として本格的に出てきて、敦賀さんのおかげで2位に据え置かれている恨みをキョーコに語るって伏線が凄すぎる。というかこの時点では作者もまだそこまで考えていなかったと思うけど。尚が20代前半の女性の意識調査で抱かれたい男7位って、キョーコもいってるように17才の尚なら無理ないと思う。テレビで理想の女性のタイプはと聞かれた蓮の答え「優しくて芯のしっかりした女性かな」は、後のキョーコちゃんそのもの。

ところで祥子さん!休憩時間とは言えスターの前でマネージャーがタバコ吸うの???おまけにそのスターは未成年なのに!!

(ACT.2 憑かれたら最後)マンションをでたキョーコはバイト先の「だるまや」に下宿。芸能人のスカウトのメッカをウロつくが4日目になってもまったくお声はかからない。自分で売り込もうとLME芸能プロダクション事務所にいって、受付で「私っ芸能人になりたいんです!!ここの事務所の偉い人に会わせて下さい。」と押し問答しているところへ現れた椹さん、一応キョーコの話を聞いてくれたが、歌手?歌は聴く方が好き、俳優?お芝居に興味ありません、タレント?バラエティ色が強そうで根本的に嫌と、話にならないので、君の目的がわかったぞ どうせ君も蓮に近づきたいだけだろう!!!と、放り出されそうになっているところにまさに当の敦賀蓮がやってくる。尚が一番嫌ってライバル視していた蓮のいる事務所だったのかと一瞬愕然としたのだが、よく考えたら自分はもうショータローとは関係ないんだから自分が敦賀蓮を忌み嫌うことないと気がつく。とはいえ、蓮に「二度と来るな」と言われて放り出されてしまう。それから何時間も、2月の寒空の下ひたすら事務所で正座するキョーコ。夜10時に椹さんが窓の外を見るとキョーコの姿が消えていたのでホッとして帰ろうとすると、なんと通用口で待ち構えていた。タレント部にいれてくださいと更に頼むが、無視してタクシーに乗る椹さんに自転車で併走してすがりつき、自宅まで毎日通って懇願すること4日、根負けした椹さんは一応LMEに入れたものの、事務所に正式に入るにはテストで社長のお眼鏡にかなわなければならないという。あっさりとオーディションの案内を受け取って帰ろうとすると、廊下でばったり敦賀蓮にぶつかる。

芸能界で何がやりたいわけでもない・・・どころか、どんなことをするのかも知らないのに芸能人になりたいうキョーコの言動は、一見現実離れしているようだけど、実は人が就職したり進学するときに、その具体的な内容はわかってないことも結構あると思う。何しろ私の大学時代の友達は、別の学科を受けるつもりだったのだけど、願書を書き間違えて、まあいいかと受ける学科を変えてしまったというし。会社に入るときにその会社にどんな部門があって何をしているのか理解してないことも多いのではないだろうか。インターンシップで中の様子を知っていればまた違うのかもしれないが。あと、私は仕事で高校生の就職指導を長らくやっていたけれど、公務員を志望する動機はと聞くと「公務員って安定してるって言うじゃないですか」本音を答える生徒がいる。でもっと突っ込むと安定しているの中身も理解して無くて「よくそういいませんか」と言われたので、公務員とは何かから説明する羽目になったことがある。なのでキョーコの破天荒ぶりは、状況を入れ替えて考えるとそれほど突拍子もないわけではないけっこう現実的なところが、スキップビートの魅力。

廊下で出会い頭に運命の人と衝突というのは少女漫画の王道。キョーコちゃんこの後もバレンタイン前日にテレビ局で尚とぶつかって、華麗なる誤解?からダークムーン撮影現場に尚に乗り込まれて強引ファーストキス(24-25巻)とか、最近ではレナード監督と衝突して、くのいちの紅葉の演技(と素の姿のギャップ)に興味を持ってもらって、たぶん今後世界に羽ばたくきっかけになりそうだし(たぶん48巻収録)。

(ACT.3 戦慄の宴①)新人発掘オーディションの案内を持っているところを敦賀蓮に見つかって、「やるだけ無駄(というため息)と君につき合わされる審査員も時間の無駄」と。「芸能業界は好きなだけでは勤まらない にもかかわらず君は芸能業界が好きでもなんでもないのに入るつもりなんだろう」と。

この蓮の敵意がわからない。最初出会ったときは、椹さんが困っているので協力して追い出したのだろうけど、赤の他人がたとえ芸能界が好きでないのに、興味本位でも刺激ほしさからでも(どちらでもないのだけど)オーディションに参加しようとしているのは本人の勝手なのに。

かっとなったキョーコは「復讐するためよ 不破尚に 文句ある!?」と啖呵を切る。不破尚を知らなかったらしくケータイ(スマホじゃない!連載開始は2002年だものね)のインターネットで調べて「このくらいなら歌が唄えりゃ程なく念願成就するだろう」と。(蓮は俳優だものね、歌手には興味ない)「まあそれもオーディションに受かればだが?」と。「受かりますとも」と言い切るキョーコに「オーディションは椹さん一人を落とすのとは訳が違うぞ 根性だけでいつまでも 事が運ぶと思うなよ」と敵意のある冷たい目に一瞬なる。次の瞬間、えせ紳士笑顔になり「得意の”根性”でめーいっぱい体あたりして早々に見る影もなく玉砕するのもいいだろう」と。

当日会場にはキラキラ女子がたくさん。落ち込んでの呪い人形を作り始めたキョーコの耳に聞こえてきたのは「もー誰よ!こんな所に子供連れて来たの」と、キョーコの前に女の子(マリアちゃん)を放り投げ、「私の目の前から消え失せて!!」と叫ぶ女性、琴南奏江。この時点でキョーコの中では奏江は「モー子さん」になった。

モー子さん初登場。今よりずっと尖った感じ。
芝居を心底愛している敦賀さんが、私欲のために芝居を使おうという発言に激怒する気持ちは、42巻で思い人の俳優の気を引きたいためにオーディションでキョーコを敵視する森住仁子に対してキョーコも味わう訳だけど、この時点ではキョーコはまだ必ずしも俳優を目指している訳じゃないし、芸能界に入りたい理由なんで千差万別。確かにキョーコちゃんはストレートに本音を言いすぎだけど、敦賀さんがそんなに怒ることではないと思うのだけどな。

それよりもここではキョーコちゃんの方が圧倒的に弱い立場なのだから、単なるパワハラになってしまっている。まあ強いて言うなら、蓮も芝居は真摯に向き合っているけど、もともと身分を隠して日本の芸能界に来たのは、日本で成功した後、自分の居場所を奪ったアメリカで改めてデビューして世界に羽ばたくためだから、自分と似た不純な匂いを感じ取ったという解釈かな。

生活の香りがするキョーコがモー子さんには気に障ったらしい。他の応募者に慰められてめそめそ泣いている女の子の頬を突如ひっぱり、「お嬢ちゃん あなた 女子供は泣けば誰かが助けてくれると思っていないーー?」と突如どろどろした雰囲気をかもしだすキョーコ。

オーディション応募のキョーコの写真は、使い捨てカメラで自分で撮って必死だったので眉間に皺が寄っている。キョーコは椹さんのコネで飛び入りなので、椹さんは気が気でない。

一方蓮もなぜかオーディションを気にしている。「復讐 そんなふざけた動機で一体どこまで生き残るかな」

オーディション会場に南米のカーニバル風に情熱的に踊るお姉さん達の中をカウボーイ姿で泳ぐようにローリィ宝田社長登場。

社長さん初登場から、常軌を逸した仮装と登場の仕方、今に至るまでぶれてない。しかし敦賀さん、キョーコが落ちると思っているのなら気にする必要ないのに、やっぱり何かひっかかるものがあったのか。マリアちゃんキョーコの辛口コメントを魅力的だと思ったようだけど(ここでは言ってないけど後ほどそういってる)はやり初登場からかなりの不思議ちゃん。

社さんはその後ずいぶんイメージが変わった。

(ACT.4 戦慄の宴②)キョーコのLMEのオーディションを受けた理由は「アカトキ・エージェンシーに所属する不破尚に追いつきたいから」。芸能プロはこの人に近づきたいというファン的な不純な理由を一番嫌うのに(そうかなあ、目標を志望動機に挙げるのは悪くないと思うけど)、それもLMEの看板俳優敦賀蓮じゃなくてライバル事務所の(これは同感)という突拍子もなさで、逆に社長の心にひっかかった「あの子が不破尚君のただの追っかけなら迷わず同じ事務所を希望すると俺は思うがね」と。そして特技披露は、キョーコが茶髪にしただけで不機嫌な大将が、思いもよらずに貸してくれた包丁で、大根の桂剥きで薔薇を作った・・・勢い余って葉ボタンになったけど、インパクトは一番。そんなキョーコに琴南奏江は「あなたは確かに目立ってるし社長の目にも留まってると思うわ でもそれはあなたの言動がこの場にそぐわないからよ」と。ちなみに琴南奏江の特技は台本を見ただけで暗記できること。

しかし琴南さんも、なんでこんなにキョーコを嫌うんだろう。人は人なのに。自分が自信あるなら他人が馬鹿なことをしてようが、わざわざ嫌みをいうまでもないのに。敦賀さんにしても、何か無視できないものをキョーコから感じているのでは。

大根の桂剥き、タレントなら使い道はあるかも。

次のテストは携帯電話から流れてくる相手の言葉に対してリアクションすること。この後の二次審査は体力的なことが主なので、タクシーをチャリで追いかけるキョーコなら楽勝だから、ここを乗り切れと祈る椹さん。

携帯の中身は振られた恋人からやりなおそうという電話。しっとりと「うれしい」と涙を流して審査員をうならせる琴南奏江、いっぽうキョーコは耳にした途端、尚に健気に尽くした日々が走馬灯のように巡り「やり直す?うれしいっ いつかそう言って帰って来てくれるって信じてたの・・・」といったあと、「って言うとでも思ったか!!『ごめん』で済んだらあの世に地獄はいらないのよ!!」と携帯をたたきつける。ふと我に返り目にしたのは哀願する社長の顔と絶望に打ちひしがれる椹さん。

このキョーコのリアクションすごくいいと思うんだけどな。もちろん芝居だったら、振られるまでの二人の関係や女性の性格によって、琴南さんのような反応もありとは思うけど、一般的には彼女を振っていろいろな女とつきあったのに、やっぱりよりを戻したいなんて言う男に尻尾を振っていいことなんてない。いいように搾取されると言うことに女だって学習するよ。ということで審査員はもっと評価して欲しかった。

(ACT.5 欠けてる気持ち①)キョーコは一次審査で落とされた。納得できずに椹さんの所へいくと、君の事は社長だけでなく俳優部門の松島君もいい評価を出してたんだけどね、君の場合「芸能人」として一番欠いてはならないものが一次審査不合格者の中で最も欠けている。「芸能人は観衆に望まれてこそ生きている 愛されてこそ成長しつづけていける 観客だけじゃない スタッフに嫌われて潰れる芸能人も少なくないからね」最後のリアクションテストは判断力テストで、社長が考案した愛に対する心理テストなんだよ。と。それはショータローの実家の旅館もよく言われた。「よくわかりました」とあっさりひいたので驚く椹さん。「愛しても必ず愛し返してくれる保証もないのにどうして会ったこともない見ず知らずのたくさんの人達を一度に愛する事ができるんですか?」キョーコにはもう誰かを愛したいって気持ちがどこかへ消えてしまった。

あまりにもあっさりひいていったキョーコに呆然として考え込む椹さんに、突然現れたマリアちゃん。61番の人(キョーコちゃん)どうなったと聞く。

だるまやで落ち込むキョーコ、京都にいた頃はショータローのお母さんにほめてもらうのが目的だったし、だるまやでは大将とおかみさんが気に入ってくれるから、決してお客さんに喜んでほしくてやった事じゃなかった。自分が誰かを思って動くのは、ショータローのためだけだったのが悲しい。誰かを「愛する」事なんてこの世で一番無駄だと思う。

キョーコの人生、むなしいのはわかるけど、あの電話の反応は正しいと思う。あそこで屑男に尻尾を振るのは、決して「愛」じゃないと思う。ましてや芸能人としてのファンやスタッフさんへの愛情なんかとは関係ない。この点、社長さんの評価というかテストの仕方はちょっと疑問。

「一番欠いてはならないものが欠けている 芸能人として?ううんきっと人間として」と落ち込んで泣き明かした後、コーンの石に悲しみを吸い取ってもらって、別のバイトをさがしに行こうとするキョーコにお前はもっと根性のある奴だとと思っていた」というだるまやの大将。

この子がタレントとして世に出たら一体何をやらかすのか興味はあるが、リアクションテストを見て、世に出てもおそらく育たないと野生のカンが訴えた・・・と思っている社長さんのところへ椹さんからの相談。たぶんキョーコに再挑戦のチャンスを与えて欲しいという・・ただしあの子に大事な感情が欠けているのは確かだ。だからこそそれを上まわる程の熱意でそれでも諦めきれないと再びあの子が自ら俺の前に立ってからだ この企画が動くのはという社長さんに「俺が知ってる君は一度の挫折なんかであきらめない 君は必ずLMEに来い!」と思う椹さん。

だるま屋の大将、社長さん、椹さん、魅力的なおじさんがたくさん。

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